What Didn't Kill Us

生存記録。大したこと書いてないので。

Bruckner: Motetten / Chorus Sine Nomine


Bruckner: Motetten
Chorus Sine Nomine, Johannes Hiemetsberger, Martin Haselböck
(2025 / Gramola / 99335)
Apple Music, Presto, HMV, highresaudio


オーストリアのシネ・ノミネ合唱団によるブルックナーのモテット集。毎年のようにコンスタントに録音されているため、録音が飽和気味の感じもするブルックナーのモテット集だが、それだけ名曲揃いであるということもまた間違いない。シネ・ノミネ合唱団の丁寧な歌い上げはとても心地良い。個人的にはもう少し輪郭がハッキリとしていて厚みのある(テネブレとかの)サウンドが好みだが、自然な発声でよく調和したブルックナーは十分に聞き応えがあり、とりわけ「Christus factus est」は弱奏と強奏のダイナミックな変化がかなり好みだった。

ブルックナーのモテットの間を埋めるのはオルガニスト、マルティン・ハーゼルベックによるインプロビゼーションだったが、これがあまりにも素晴らしかった。Os justi からの流れなんかはニンマリとしてしまう。全体的に長すぎず短すぎず、モテットの流れをまったく邪魔せず主役の座を奪うこともない、でもしっかりと存在感があってアルバムに華を添える、鮮やかな即興演奏だった。

★★★☆☆(2025/1/9)

最近聴いた音楽 / 24-01-12

既踏峰「こがね」

こがね

こがね

  • 既踏峰
  • J-Pop
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

amazarashi「痛覚」

無難に良い曲のリリースが続いている印象。自分の中でamazarashiという存在は深追いするほどでもないが、聴くのをやめるほどでもないかなという感じになってきた。

痛覚

痛覚

  • amazarashi
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

downy「日蝕」

これはさすがにカッコ良すぎる。痺れた。

日蝕

日蝕

  • downy
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Naive Superβ「A Night In The Life」

洒落た響きが良い。ベースの動きに注意が向いてしまう。

A Night In The Life

A Night In The Life

  • Naive Superβ
  • インディー・ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

polly「残火 (re-recording)」「バースデイ (re-recording)」

今年2月の解散まで再録のリリースが続く。最新アルバムを除いてちゃんと聴いたことがないので、完全にはじめて聴く曲が連続してリリースされたがこの2曲どちらもめちゃくちゃカッコ良い。

残火 (re-recording)

残火 (re-recording)

  • polly
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

バースデイ (re-recording)

バースデイ (re-recording)

  • polly
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

betcover!!『馬』(2023)

『時間』や『卵』と比べると、かなり聴きやすいアルバムだったんだなぁ。個人的にはこれくらいで今はちょうど良いところもあるが。

馬

  • betcover!!
  • オルタナティブ
  • ¥1375

CHO CO PA CO CHO CO QUiN QUIN『tradition』(2023)

CDショップ大賞の入賞作品に選ばれたという記事を目にして久しぶりに聴いたのだが、何度聞いても、これが1枚目とか信じられないクオリティだなと思う。新作を心待ちにしている。

tradition

tradition

  • CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
  • エレクトロニック
  • ¥2037

the cabs『一番はじめの出来事』(2011)

誰かのために生きてみたい、でも僕たちに明日はない。syrup16gとかamazarashiとか、あの辺のバンドのような陰鬱さもなく、むしろ軽やかに歌ってのけてしまうところに逆説的に虚無を見出してしまう。

一番はじめの出来事 - EP

一番はじめの出来事 - EP

  • the cabs
  • オルタナティブ
  • ¥1224

Rheinberger: Messe in Es-dur / SWR Vokalensemble


Rheinberger: Messe in Es-dur
SWR Vokalensemble, Yuval Weinberg
(2024)



昨年はほとんどApple Music (Classical) のみで合唱音楽と触れたが、今年はYouTubeももう少し見たいなということを思っている。やはり、映像付きだからこそ分かるもの(指揮者や奏者の表情、身体運動など)もあるし、映像付きの方が音楽に集中しやすいということもある。今回はSWRヴォーカルアンサンブルのチャンネルから、昨年末に公開されたラインベルガーのミサ曲変ホ長調を視聴した。指揮はユヴァル・ワインバーグ。映像で見るとやっぱり指揮者若いなぁというのと、譜面をタブレットにしてる人ばっかだなぁというのが印象的だった。

同作の録音と言えば、フリーダー・ベルニウスとシュトゥットガルト室内合唱団の録音が有名な印象があるし、2023年リリースのオランダ放送合唱団の録音もなかなか良かったことを記憶している。一方、これまでYouTubeで見られる演奏には良い演奏があったという記憶があまりないのだが、このSWRヴォーカルアンサンブルの演奏は全体的にかなり推せる演奏だった。ハイレベルな合唱団と知っているので聴く前からある程度期待はしていたが、十分期待に応えてくれた演奏だったと思う。

さすがこの合唱団らしく全体を通して重厚なサウンドだが、うるさくならないようにフォルテでも節度を保っていた印象。弱奏がかなり美しく表現されていた。また、基本的なツボは押さえながらもところどころでは子音をかなり立てて言葉を強めたり、テンポやダイナミクスを細かく調整して味のある表現をしていたのが良かった。

★★★★☆(2025/1/3)

最近聴いた音楽 / 25-01-10

とある話題に触発されて、絶対音感を持っている人の音楽体験というのは一体どうなっているのか、ということを考えている。そもそも何を基準にしての「絶対音感」なのか。たとえば基準となるAの音を440Hz、442Hzのどちらでチューニングされているのか。あるいは平均律なのか純正律なのか。純正律の長三和音の第3音を少し低くとることで調和するのは絶対音感持ちの人からしたら気持ち悪いのか。ポルタメントは聴けるのか。雅楽は聴けるのか。ベルセデス・メンツの音楽は絶対音感とそんなに相性が悪いのか…(事の発端)。

まぁ、そんな問いはさておき、転調し続けるドレミの歌のニューバージョンがアップロードされていて、思わず笑ってしまった。

Pygmy I'm cricket『can't swim』

聴きながらパッと思い出したのはodol。優しい音づくりに魅了される一枚だった。結構好き。

Can't Swim - EP

Can't Swim - EP

  • Pygmy I'm cricket
  • オルタナティブ
  • ¥918

the bercedes menz『mutist beach』

ベルセデスの2nd。1st以上に好きだな。ちゃんとこの人たちが「J-POP」を名乗ってることに希望を感じるかも。最近の洗練されたサウンドがトレンドのJ-POPと比べればローファイでラウドなゴリゴリのロックの音がしているが、J-POPとして当たり前に受け入れられているのは類い稀なるポップセンスがあるからだろう。このきわっきわのところを攻めるバンド、まったく嫌いじゃない。

Mutist Beach

Mutist Beach

  • the bercedes menz
  • J-Pop
  • ¥1833

TOMOO「コントラスト」

気持ちの良いバラードだ。TOMOOさん、どのタイアップも外さないな。今度のドラマはちゃんと完走できるかな。

コントラスト

コントラスト

  • TOMOO
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

betcover!!『時間』(2021)

世間(SNSの音楽オタク)にはこの作品が一番の名盤扱いされているようなのだが、『卵』と比べても魅力を掴み損ねている。悪いということではなくて、なんだかすごいことにはなっているのは分かるのだが、結局何がすごいのかもよく分からなくて、この圧倒的なまでのおどろおどろしさを前にしてどう言葉にしたら良いかも分からないままに立ち尽くすしかない感じ。とはいえ、闇に吸い込まれるような不思議な吸引力があって結局音がこびりついてしまった。何度も聴くものなのかは分からない。

時間

時間

  • betcover!!
  • オルタナティブ
  • ¥1681

kurayamisaka『kimi wo omotte iru』(2022)

久々にkurayamisakaを聴きたくなった。過大評価とか過小評価とかはよくわかんないけど、ほぼ確実に次世代オルタナの筆頭ではあるよな。

kimi wo omotte iru - EP

kimi wo omotte iru - EP

  • kurayamisaka
  • オルタナティブ
  • ¥1528

家主「Dreamy」(2020)

アルバム(石のような自由)のバージョンとだいぶ違って驚いた。アレンジはだいぶ違うし、マスタリングがかなり違うし、こちらの方が素朴な味がある。後奏が良かった。

Dreamy

Dreamy

  • 家主
  • オルタナティブ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

Silent Starlight / Youth Choir Kamer


Silent Starlight
Youth Choir Kamer, Jurģis Cābulis, Partriks Kārlis Stepe
(2024 / Prima Classic / PRIMA059)
Apple Music, Presto, highresaudio


カメール合唱団が年末にリリースした現代合唱作品のオムニバスEPを聴く。リリース直後にも聴いているのだが、年末はバタバタしていて感想ブログを書くのが遅くなってしまった。曲目は次の通り。

  • Medins: Summer Evening
  • Sauka: I Saw You in Gold
  • Dzenītis: Peace With Living Eyes
  • Ešenvalds: Stars
  • Prauliņš: Agnus Dei
  • Vasks: The Fruit of Silence

2023年にリリースされた『Nothern Echoes』の収録曲と比べると、作曲家ではエセンヴァルズとヴァスクスだけが共通している。EPの雰囲気としては割と前作と近いかなというのが第一印象。パッと確認した限りでは、全員ラトビア出身かなと思われる(間違っているかもしれない)。

タイトルからもわかるように全体を通して「静かな(silent)」音楽ではあるが、静かではあっても動的ではあり、まさに感情(emotion)の動き、すなわち「感動(moved)」のある音楽であった。日本語では動と静は対比されるわけだけど、ある側面から見て静的なものは別の側面から見れば動的なものなのかもしれない。側から見て立ち止まっているように見える人は、その内側では深く激しい内省によって自己というものが大きく揺れ動いているものなのかもしれない。裏を返せば、これだけ動的な音楽なのに「静」を感じられるところが面白いとも言えるかもしれない。

後半にかけてグラスハープ、ナレーション、ピアノなどが用いられているということを加味しても、似たような音楽が並んでいるなという印象は正直否めなかったが、それもあって20分程度のEPという尺が個人的には程良かった。

★★★★★(2025/1/3)