スイス出身の作曲家イーヴォ・アントニーニの合唱作品集(2023)。演奏はスティーヴン・レイトン × トリニティ・カレッジ・ケンブリッジ混声合唱団。アントニーニという作曲家は名前こそ知ってるが、そこまで聴いてこなかったのでどんな感じだろうと思って選んだ。
2010年以降に作曲された約10年間の作品が並んでいる。たとえば「O magnum mysterium」は声部数も標準的でかなりシンプルな作りの作品ながら、アントニーニという作曲家の持ち味を一番感じられる作品かもしれない。テキストを自然な旋律に落とし込み、和声的な美しさが伴うことでテキストに色を与えることに成功している。無論、よく洗練されたトリニティ・カレッジ混声合唱団の演奏があってこそ。
「Canticum novum」や「Alleluia」あたりは軽やかに歌われるテキストが輝きを持っているような、そんなジュビラントな音楽が楽しめる。対してレガートでメロディックな音楽が楽しめる「Come to me」や「Those Tender Words」、ソリストが静謐な美しさを持っている「Nunc Dimittis」のような作品もある。
アントニーニの彩り豊かな合唱曲を一枚で楽しめる稀有なアルバムなのだが、一曲一曲が短いとはいえパワーのある作品なので、16曲もアントニーニの作品に浸り続けるのはさすがにハードだなという感覚もある。別のアルバムなどを挟みながらゆっくり楽しむ方が向いている一枚かもしれない。
Ivo Antognini: Come to me in the silence of the night
Trinity College Choir Cambridge, Stephen Layton
2023 Hyperion (CDA68425)
Presto, Hyperion
★★★★☆(2024/6/14)