フランスの室内合唱団アクサンチュスの演奏は独特の味わいがあるなぁといつも思わせてくれる。19〜20世紀のフランスで活躍した作曲家、サン=サーンスとレイナルド・アーンの合唱作品を収めた一枚『光に寄す À la lumière』もアクサンチュスらしい深く芳醇な演奏が楽しめる。指揮はクリストフ・グラッペロン。
前半はサン=サーンス。冒頭の「夕べのロマンス Op.118」が、いきなり妖艶さのある魅力的な演奏で一気に惹き込まれた。こういう曲は特にアクサンチュスの演奏が映える。続く「2つの合唱曲 Op.68」はオランダ室内合唱団 × ダイクストラ版(Alpha: ALPHA638)とかなり異なる趣の仕上がり。オランダ室内合唱団と比べてアクサンチュスは優雅さや長閑さに欠けるが、熟成した深みのある味わいがある。
サン=サーンスの最終曲でもある5曲目「サルタレッロ Op.74」は男声合唱作品。混声4作は割とたっぷりハーモニーやレガートなフレーズを聴かせる作品が並んでいた印象だが、最後のサルタレッロはリズミカルでマルカートな部分も多く、ハリのあるカチッと決まった演奏がカッコ良かった。
続くレイナルド・アーンの作品は、サン=サーンスと類似する作風ながらかなり異なる印象も受ける。『歌とマドリガル』の3曲や「暗部」は、短いながらも旋律の美しさが印象に残るし、サン=サーンスと比べて和声の感じが個性的に思われた。和声的な美しさは特に「光に寄す」という本アルバム最長の一曲で特に顕著だった。
ラストのピアノ付きの3曲は昼→夜→朝と時間帯がだんだん移っていくように作品が配置されている。合唱だけでなくピアノがとても美しいなという印象を受ける。最終曲「アテネ式の朝の歌」は女声合唱作品で、サン=サーンスが男声合唱作品で終わったことと対応しているのかなと。女声合唱作品の温かみに溢れた優雅な一作だった。
たっぷりと楽しめる良い一枚だった。
Saint-Saëns - Hahn: À la lumière
Accentus, Christophe Grapperon, Eloïse Bella Kohn
2022 (Alpha: ALPHA864)
Presto, HMV
★★★★☆(2024/6/18)