What Didn't Kill Us

生存記録。レビューではなく日記。

Ein Menschliches Requiem / Vlaams Radiokoor


いきなりの余談だが、Vlaams radiokoor という名前を最初に見たときに、作曲家のブラームスを名前に冠した合唱団だと勘違いしたことを急に思い出した。今回はそんなフラマン合唱団の演奏(バルト・ファン・レイン指揮)のブラームス作曲『ドイツ・レクイエム』を収めた一枚を聴いた。全7曲それぞれの前にブラームスと親交のあったシューマン作曲のピアノ曲『子供の情景』が挿入され、アルバムの題もブラームスの本曲への理念に即して「人間的レクイエム」となっている。正直、この組み合わせだけでも高評価をしたくなる。『子供の情景』がこれ以上ないほど良い役割を果たしていて、アルバムの質を高めて、グッと音楽を引き締めている。

四手ピアノ伴奏版の『ドイツ・レクイエム』は先日コールヴェルク・ルールのアルバムでも聴いたが、今回のフラマン放送合唱団はまた色々と違った印象を受ける。編曲も違うのかな。先に悪いことを書いておくと、『子供の情景』もそうだったがピアノの表現力は良かったなと感じる一方、録音のせいかピアノの音があまりクリアでなかったり、ペダルを使うときに歪んだような音が聴こえることがあるのは気になった(ピアノってこういうもんかな…)。せっかくの良演なのにという気持ち。

第2曲の強奏のところなどはこんなに鳴らすかというくらいピアノが強く奏で、なんなら合唱よりも前にいるように感じられたし、全体的にもけっこうピアノが目立つ演奏だなと。それは悪いことでもなく、迫力を高めるという意味で、オケと比べてスケールダウンしてしまうこの四手ピアノ版に対する一つのアプローチとしては十分アリだと思う。合唱も表情変化が豊かな演奏であるとともに、人数が多い分しっかりとパワフルさを備えた演奏(特に第6曲)だった。独唱もさすがの表現力だった。

やっぱり第2曲に惹かれるんだよなぁと思っていた耳に妙に響いたのが第4曲。5分にも満たない短い曲ながらも曲想の変化は多く、充実感のある一曲。第5曲と並んで「美しい曲」と紹介されることが多いようだが、あえて「温かい温度感の曲」と書いておきたい。


Ein Menschliches Requiem
Vlaams Radiokoor, Bart Van Reyn, Jan Michiels (piano), Inge Spinette (piano)
2022 (Evil Penguin: EPRC0046)
Links: Presto, hmv, Notes(pdf), 対訳
★★★★☆(2024/7/16)

Ein Menschliches Requiem

Ein Menschliches Requiem

  • Vlaams Radiokoor & Bart van Reyn
  • クラシック
  • ¥1528