昨日のブログに引き続き。更新スケジュールをぼちぼち変えようかなという気持ちでいる。
- 踊ってばかりの国『On the shore』
- THE イナズマ戦隊『グッジョブ!!』
- トクマルシューゴ『Song Symbiosis』
- 長谷川白紙『魔法学校』
- 日向文『誰も知らない - EP』
- その他(フジロック)
踊ってばかりの国『On the shore』
いきなりインスト曲の「Universe」で何かがこぼれ出しそうになった。表題曲の「On the shore」は文句なしに良かったんだけど、個人的にはその次の「ビー玉」「燈」がエモーショナルに響いた。この2曲はまさにそうだけど、全体的に3拍子系のビートの曲が多い気がしてそれがなんか良かったなぁと思っている。
THE イナズマ戦隊『グッジョブ!!』
知ってる曲は「応援歌」はじめ数曲しかないバンドなんだけど、アルバムからは実家のような安心感があった。表題の「グッジョブ!!」も良いんだけど、「生き抜け愚か者」「鼻先がツンとなって」の圧倒的な「彼ららしさ」が印象的だった。「いつかを夢見る馬鹿であれ」だとか「未来も捨てたもんじゃない」だとか、そういう泥臭い言葉を泥臭く歌い上げてもスッと耳に入ってくるバンドというのは、案外希少だと思う。
生き抜け愚か者 毎日つまずいて
それでも生きてりゃ 陽が昇る
がんばれ俺達よ 間違いも全力だ
その生き様に 陽が昇るTHE イナズマ戦隊「生き抜け愚か者」
トクマルシューゴ『Song Symbiosis』
トクマルシューゴが何者なのかもよく知らずに聴き始めてしまったのだが、他ではなかなか聴けない雑多な音がたくさん詰まった遊び心を感じられる(言うまでもないが緻密な)ポップミュージックで、聴いているだけで楽しい。それにしても色んな音が鳴る。一曲一曲の違いだけでなく、一曲の中でもそう展開するんだという驚きがある。歌詞はあるけど、歌も楽器としてインストアルバムみたいな気持ちで聴いている。とりあえず Toloope、Counting Dog、Kotohanose あたりが特に好きだった。
長谷川白紙『魔法学校』
SNSで絶賛されていたのを見て聴いた。名前はなぜか知っていたが、曲を聴くのは初めて。本当にすごかった。こういうのを聴いてしまうとここで感想文まがいのものを書いている自分が恥ずかしくなる。自分の理解が到底及ばないような大いなるものに対してまともに持てる感覚は「おそれ=畏怖」だけなんだなみたいなことを思った。良いかどうかなんてのはもはやよく分からないし、考えるだけ無駄な気もする。聴き込めばもっと何か言葉が出せるかな。今はまだ何も出せそうにない。「外」は好き。
日向文『誰も知らない - EP』
自分から孤独の沼に浸かるのと
突き落とされるのでは死因が違う日向文「誰も知らない」
この二行だけで取り出しても何日も何年も語れるんじゃないか。そんな密度が表題曲の「誰も知らない」にはある。この EP にはあと4曲収録されていて、その4曲も素晴らしいけど、「誰も知らない」の話だけで十分なんじゃないかという気もしてくるくらい。でも、この曲についてちゃんと書くには時間がかかりそうな気もする。短い文を書くだけなのに何度も何度も書き直していてら書き直してもまともな文章にならないが、言葉は止まらない。
是枝裕和監督作の同名映画があって、直接はあんまり関係ないんだろうと思いつつも、なんとなく交差するものを感じている。是枝裕和とかあとは坂元裕二とかがずっと描いてきた「人」がこの歌の中にいる気がして。具体名は出さない方が良いかな。でも、聞いていて色々な顔が思い浮かんでいる。坂元裕二『モザイクジャパン』に登場する、虚ろな目をした桃子という女性のことをふと思い浮かべたり。
自殺はモザイクに隠された殺人だ。自殺は、あれはモザイクの向こうのジェノサイドだ。
坂元裕二『モザイクジャパン』第2話
これを引用することが適切かは分からないけれど、ふと思い浮かべたものの一つはこのセリフだった。モザイクに隠されて、自分から孤独の沼に浸かったように見せかけられているけど、本当は突き落とされた人がたくさんいるのではないか。「おひとりさま天国」とか言っている場合ではない。孤独=おひとりさまを賛美する言説の増加には、石田光規著『孤立不安社会』でも警鐘が鳴らされていたはず。
日向文「ワンコーラス書き終えたくらいの時にとある女性がこの世を去った記事を読んで、その子を抱きしめることが出来たらなって気持ちで書き終えた。大丈夫、と笑ってやり過ごしてしまう人が少しでも減りますように。」
ライナーノーツ(Twitter・Xより)
#誰も知らないライナーノーツ
— 日向文|hinat(a)ya 🕊🦅 (@hinataya0320) 2024年7月22日
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自分から孤独の沼に浸かるのと
突き落とされるのでは死因が違う
━━━━━━━━━━━━━━… pic.twitter.com/fEnfbESoc5
日向文のことをとりわけ深く知っているわけでもなく、ただこの「誰も知らない」という一曲のみについて考えたが、まだまだこの曲との時間は始まったばかりだ。
その他(フジロック)
フジロックのAmazonプライム配信を少しだけ視聴した。2日目(土曜日)の午前中から昼過ぎまで時間があったので、並行で他のことをしながらだったが、トクマルシューゴと syrup16g を視聴。
トクマルシューゴはライブでも遊び心を感じるさまざまな音が聞こえてくる演奏で、それを映像で見られるのも良かったし、なんならライブの方がアレンジも良いなと思わされる瞬間が何度もあった。生で浴びてみたかった気もする。アルバムを聴いたときにはヴォーカルにあまり耳が行かなかったが、ライブ映像ということもあってかヴォーカルもだいぶ印象に残る。いい出会いができたなという気持ち。
syrup16g は去年あたり少しハマったのだが有名曲くらいしかまともに知らないし、何より顔を見るのが初めてだった。真昼間に太陽の下でシロップって合わないんじゃないかなぁと思っていたが、そんな心配は杞憂だった。さらに、完全に「初心者向けのセトリ」だったので、私もある程度は知っている曲だらけ。総括するならば熱量は感じられるが予想以上に不安定さのある演奏で、でもそんな不安定な音楽が走り抜けていくことで妙な感動があるという不思議な時間だった。「明日を落としても」で気づいたら泣いていた。最後の「Reborn」は不安定さを忘れさせるくらいバチバチに歌い上げてて良かった。全部良かったんだけど(パープルムカデとか生活とか翌日とかももちろん良かったんだけど)特にこの2曲が印象的。
仕事の合間に少しだけ折坂悠太も観られたのだが、ここもとても良かった。「ハチス」が聴けなかったのは残念だったが、「努努」は聴けた。あと、くるりが全く観られなかったのは残念だったが、SNS でなかなか熱い話が流れてきたので、一応メモしておきたい。
くるりの最後のMCの「友達、恋人、家族、上司、色んな人と来てると思いますけど、人は結局は孤独で、ロックンロールってのはその孤独と寄り添っていってくれるものと理解してます。」が良すぎて泣いてしまった
くるりの最後のMCの「友達、恋人、家族、上司、色んな人と来てると思いますけど、人は結局は孤独で、ロックンロールってのはその孤独と寄り添っていってくれるものと理解してます。」が良すぎて泣いてしまった
— じょぺこ (@john_pecojo) 2024年7月27日
3日目はずとまよ(ずっと真夜中でいいのに。)を見た。なんとなく自分の好みのジャンルとは遠い人たちという認識だったのだが、最近少しだけ聴いたことで、むしろど真ん中かもと思い始めていて(マカロニえんぴつも別ベクトルで同じ現象が起きてるけど、今回のフジロックは見逃した…)、とりあえず見てみようと。
一言で言えば圧倒的なステージ。ほとんど曲をちゃんと知らないので、アルバムと比べてどうとか、今回のセトリはこうだったよねとかは言えないし、まともな感想など書けるような感じではなかったけど、でも明らかにこの瞬間だけのステージという感じがあったし、良かったなとか好きだなという感情だけは自覚できる。
光の演出が結構すごくて映像でも割と目をやられそうになったが、楽器隊が映し出されていく中では見たことない楽器もあるし、演奏もずっと凄かった。歌唱もすごい。ライブの方が説得力がある音楽だった。定番曲だとは思うけど、ラスト2曲(あいつら全員同窓会、暗く黒く)が特に好みだった。「暗く黒く」のボーカルソロになるところとか、ちょっと鳥肌が立ったし。ライブならではの凄さが絶対あるし、もうちょっとアルバムとかを聴き込んでから改めてライブを見てみたいなと。
ずとまよもMCでくるりの発言を受けて、私にとってロックはという話をしていた。引きこもりがちの私にとって、近づいたり遠のいたりしながらもそばにいてくれるものが音楽、そしてロックなのだと、そんなことを言っていた。「そばにいる」という言葉に「近づいたり遠のいたりする」という言葉をつけるのが、信頼できる人だなって思った。
ニューリリース以外に聴きたいものがたくさんたくさんある。幸せなことだ。