今回は2024年リリースの新譜。ダリオ・リベキ指揮のエラート合唱団というイタリアの合唱団による演奏で、近現代イタリアの合唱作品を収録している一枚。収録曲はピツェッティ作曲『レクイエム』、マルグッティ作曲『ミサ・ロルカ』より Kyrie、Sanctus、そしてドナーティ作曲『谷川の水を求める鹿のように〜パレストリーナをめぐって〜』。
ピツェッティ『レクイエム』は厳粛な美しさのある第一楽章 Requiem aeternam と第五楽章 Libera me に挟まれた3つの楽章が強烈な個性を持っていたのが印象的。最長の楽章であり、全体を通して最も激しくなる部分もありながら静謐な Amen で終わるドラマティックな Dies irae は強い印象を残すが、12声部(3群)という大規模な編成によって厚みのある響きを実現した Sanctus や、それと対比されるように大きく編成を絞って曲としてもまだ物足りないくらいの長さであっという間に終わってしまう Agnus dei もなかなか印象深い。かなり奥深い作品なので、これは何度も聴き込みたいなと。
マルグッティ『ミサ・ロルカ』はピツェッティのレクイエムと比べると一曲一曲がより内容的にも複雑で、このアルバムの中でも一番集中力を要する。二曲の抜粋だが、これだけでもなかなかのボリューム。複数の曲が一個の曲に組み合わされているような。厳粛な雰囲気で始まる Kyrie は民族音楽のような特徴的なソロを経て、複雑なポリフォニーを経て、再び厳粛な音楽へと還っていき、ラストにもう一度だけソロが鳴らされ tutti のマイナーコードで終わる。このソロの正体は知りたいな。Sanctus はまた一味違うバリトンソロから始まり、密集した複雑な和声が強烈に響く前半から、Benedictus に到達する頃には甘美な和声とメロディックな旋律がみられるようになり、それらがポリフォニックに絡み合う音楽へ。こちらもラストは孤高なバリトンソロがあり、そのまま終わってしまう。かなり聞き応えのある二曲だった。
ラストはドナーティ『谷川の水を求める鹿のように〜パレストリーナをめぐって〜』。正直この曲に一番感動した。圧倒的に心惹かれるものがあった。ORA がやっている「ルネサンス音楽の現代音楽による反映」とコンセプトはよく似ていると言えるだろう。パレストリーナの何を引用したのかまでは分からなかったが、ルネサンスポリフォニーの味わいを残しながら、現代音楽らしい和声を使い、さらには環境音を再現することで唯一無二の音響空間を実現している。あえて言うと、エセンヴァルズの「Stars」をはじめて聴いたときと同じような感動を覚えたのだが、実際エセンヴァルズと作風が似ているところはあると思う。これはなかなかすごいなと。
エラート合唱団は結成からまだ数年の合唱団らしく、これからが十分に期待できるのではないかと思う。なかなか良い一枚だった。
Pizzetti: Messa di Requiem | Margutti | Donati
Erato Choir, Dario Ribechi
2024 (Dynamic: CDS8017)
Links: Presto, hmv
★★★★☆(2024/7/21)