新しく聴いたアルバムなどについて簡単な感想をつけて備忘録として残しているブログ。好き勝手に書いているのであしからず。前回→
新譜(2024)
あいみょん「ざらめ」
ドラマ主題歌ということで9月リリースのアルバムから先行配信されているらしい。サビは同じフレーズを3回連呼すると耳に残るなぁと。折坂悠太「朝顔」の「ここに出会う、出会う、出会う」を不意に思い出した。日本語の組み合わせ方はさすがだなと思ったのだが、あいみょんらしい音楽(リリックも含め)だなという以上に書くことはあまりないかも。
一つだけ思ったことを書いておくと、冒頭では「胸に刺さった無名の刃を抜く」ことについて歌っていたのに、最後には「胸に残った鉛の屑が溶ける」ことへと話が変わっているのはミソかもなと。個人的には「抜けなかった」と解釈。
toe『NOW I SEE THE LIGHT』
フジロックのタイムテーブルで名前を見かけたとき、そういえばニューリリースの中に名前があったなと思い、気になって聴いてみた。インストバンドらしいが、このアルバムには歌モノもそこそこ収録されている。なんというか(少なくとも私にとっては)聴きながら何かを考える必要はなくて、ただ聞こえてくる音楽に身を委ねていれば、唯一無二の40分を過ごすことができる。リリックがある曲も音の方が雄弁に「語っている」ような感じがした。特に最初の3曲が好き。
どんな人たちなのか知りたいなと思って、Rolling Stone Japan のインタビュー記事に目を通してみると、面白い話が色々となされていた。個人的には「政治的」であることについての見解が印象的。
トリプルファイヤー『EXTRA』
スカート(澤部渡)のことが好きで、その澤部さんがTwitterで紹介していた「相席屋に行きたい」を聴いてすぐ好きになったのが少し前のこと。そんなこともあって、初心者ながら割と楽しみにしていた。
新作アルバムは「お酒を飲んだら楽しいね」というある種の人生の真理のような一曲から始まる。続く「Bar」も含めて妙に酒の匂いがする。乗れるビートで軽快に進んでいくのだが、聴けば聴くほど寂しくなってくる。偏見かもしれないが、このアルバムからは最後までずっと「おじさん(おばさん)の悲哀」が感じられて仕方ないのだ。他の世代にも当てはまるんだろうけど、でもやっぱりいちばん当てはまりそうなのはこの世代のような気がする。偏見だとしてもそうやって聴くのを許してほしい。「スピリチュアルボーイ」「ユニバーサルカルマ」を聴きながら、私の中ではもうほとんど確信に変わった。スピリチュアルや陰謀論に「救済」される人たちのことを思い浮かべた。この2曲には「正しくない」者に生かされる者をさらっと肯定する強さがあった気がする。
続く「サクセス」も良いトラックで切実なことを歌っていて泣きそうになった。「社会派」という言葉を安易に使うのも違うような気はするが、それでも(この曲に限らず)現代社会の歪みと無縁ではないところを歌っている。何度でも言うが、このアルバムではこれを軽妙に歌い上げているからすごい。さらに、思い通りにいかないながらも懸命に生きる多様な人生を歌った「ここではないどこか」「シルバースタッフ」「諦めない人」を経て、心の叫びが詰まった「相席屋に行きたい」、そして最後に宿命論的なリリックが印象的な「ギフテッド」へ。「ギフテッド」はトラックも素晴らしかったし、最後にこの歌詞に到達するのが面白いなと。与えられし者の悲哀と読むか、与えられなかった者の願望と読むか。どちらもあり得そうな気はする。また、デュルケーム『自殺論』の自殺類型の中で「アノミー的自殺」と「宿命的自殺」という概念が対比されているという話に踏み込みたくなったんだけど… さすがにここではやめておく。
一通り書き終わって、ふいに宮藤官九郎『季節のない街』の最終話のことを思い出した。あのドラマの「お祭り」感とこのアルバムはどこか通じている気がする。感じて、考えて、感じて、考えて。まだまだ書けそうな気がするけどとりあえずここまで。
乃木坂46「あの光」
某曲と比べればだいぶいい。当たり障りのない平均点の音楽という感じなのでさほど印象には残らなかったが、2サビの終わりの「丸い月も 明日は欠けてく」という部分は耳に残った。満月とかそういう整った月は苦手だけど、欠けた月は好きなので。もはや「擁護」のような感想だな。
旧譜(〜2023)
ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』
フジロックの余波でちゃんと聴きはじめようと思ったずとまよ。とりあえず2023年リリースの最新アルバムから聴いている。これまであまり聴いてこなかったのは普通に偏見だったな。聴きながら一番に思ったことはフジロックのようなライブでしか出せない音もあれば、録音媒体でしか出せない音もあるということ。あのときの感動がここにあるというよりも、あのときとは別の感動がここにはある。これらは相互補完的に楽曲を「音楽」へと昇華させている。あとは、時折言葉が過剰気味に聞こえるのは amazarashi と近い。というかこの二者は違いも多いけど共通点も多そう。
華やかなブラスセクションと激しいピアノ&ベースが印象的に鳴り響く「花一匁」から始まって、筋が一本通っていながらも(=通底する似たものは感じさせながらも)多種多様なトラックが最後まで続くので全く飽きなかった。とりあえず一聴した感じでは「綺羅キラー」と「夏枯れ」が目にとまった。あとは「あいつら全員同窓会」もやっぱり良い。
その他
Aqua Timez いろいろ
Aqua Timez を久しぶりに聴いた。YouTube でライブ映像を順に解禁していたのを観た。ちゃんと追ってきたバンドではないし、なんなら気づいたら解散してたくらいなんだけど、でもいくつかの曲は深い思い出もある。年齢がバレるけど青春とともにあった。「決意の朝に」「千の夜をこえて」、そして「虹」。3曲聴いて、3曲ともちょっと泣いた。彼らもそっと孤独に寄り添ってくれる。改めて歌詞を読んでもその圧倒的なやさしさに心を打たれた。
巡る季節のひとつのように
悲しい時は 悲しいままに
幸せになることを 急がないで
大丈夫だよ ここにいるから
大丈夫だよ どこにもいかない
また走り出す時は 君といっしょAqua Timez「虹」
ゆず「背中」
ゆず「背中」を久しぶりに聴いた。調べていたら父親のことを歌っているのではなく母親のことを歌った曲だと知って驚いた。何年も勘違いしていた。確かに母親のことって言われて納得するような内容だけど、自分自身の父親に対する想いと重なりすぎてて、先入観を持っていたな。ただ、今回改めて聴き返しながら、あぁ自分自身の父親の背中だけでなくて母親の背中も… という感覚はあって。どんどんこの曲の刺さり具合が深くなっている。