備忘録としてポップス曲を記しているブログ。基本的にはいつも通りのトーンですが、今回はラストに「掛橋沙耶香 卒業セレモニー」の感想も少しだけまじめに書きました。めちゃくちゃ余談ですが、表設定として「プライベート・スーパースター」との、そして裏設定として8月リリースの2曲との共鳴を感じながら書きました。
新作(2024/8)
清 竜人25「青春しちゃっていいじゃん」
あんまりよく知らないで聴いたんだけど、こういうアイドルポップスは普通に好き。Sped UpバージョンとSped Downバージョンを収録してるのも面白い。そういう文化があるのかな。
米津玄師「がらくた」
野木亜紀子『ラストマイル』の主題歌だが、坂元裕二との、特に『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』との圧倒的な共鳴を感じている。一回目に聴いたときには自然と涙がこぼれた。ちょっとすごすぎたな…
CHS『SWELTERING NIGHT』
mei eharaが参加した「One Summer Day」を最初に見たので、日本のミュージシャンかと思ったら韓国のミュージシャンらしい。世界が広くなりすぎてしまうのを恐れて国外のミュージシャンは「意図的に」避けていたのだが、出会ってしまったものは仕方ない。素晴らしかった。音楽は国境を越える。全体的にアンビエントっぽさもあるが、「Wet Market」のみ攻撃的なサイケという感じ。mei eharaの歌もやっぱり良いなぁ。
jizue『LOTUS』
TBS系ドラマ『下剋上球児』などの劇伴も担当しているjizueによるEP。こういうのがもうとにかく好き。「obsession」でいきなりグッと引き込まれて、そこからもずっと素晴らしい。「You」が爽やかながらも熱い。
準新作・旧作
離婚伝説「本日のおすすめ」
離婚伝説って何者?という感じなのだが、これは耳に残る。冗談抜きで無限にリピート可能なレベル。なんで先月聴かなかったんだろう。ちょっと度肝を抜かれている。めちゃくちゃ良いです。【2024/7】
碧海祐人『表象の庭で』
これまで聴いてきた中でも一番「作品性」というものを強く感じたかもしれない。トラックのバリエーションが豊かであると同時に、言葉の斬れ味にも目がいった。noteで公開されている「セルフライナーポエトリー」も解説ではなくポエトリー形式なのがおもしろい。良い意味で聴きやすい「夜風」や「午睡」のような作品も良いし、先鋭的な味わいのある「熱」や「沈む春」などもなかなか良い。なるほど良い一枚だと思う。【2021】
その他
ゆっきゅん × 君島大空「プライベート・スーパースター」
ねえプライベート・スーパースター!
僕の前では頑張らないでくれ
神様みたいにさせないよ 機嫌悪いのに踊ろうよ
プライベート・スーパースター!
顔色よく生きてくれ
どんな日を許して強くなったの
わかったよ 君が笑っていたから
ゆっきゅん × 君島大空「プライベート・スーパースター」
令和最強と言っていいくらいの友情ソングを改めて聴きながら、アイドル≒スーパースター≒偶像・憧憬の物語と対比させながら聴くべきなのかもしれないと思った。掛橋卒セレの後に観たので尚更そんなことを思っている。
それにしてもMV素晴らしかったな…
乃木坂46 掛橋沙耶香卒業セレモニー
YouTubeで配信された乃木坂46掛橋沙耶香の卒業セレモニーを視聴した。彼女がたった一夜だけ見せた「光」はあまりにも儚く、そして美しかった。深く追っていたわけではないが見ながら思ったことを自由に書きたい。
2年ぶりに舞台に立った彼女の姿は、アイドルらしくもありアイドルらしくなくもあり、掛橋らしくもあり掛橋らしくなくもあった。2022年夏の休業から気づけば2024年夏へ。この2年間に北川、早川、清宮の卒業や選抜の主力メンバーの変化など4期生をめぐる景色は大きく変わり、そして何より掛橋の「風貌」が大きく変わり、その大きすぎる変化を前に立ちつくすしかなかった。時計の針は止まっていたどころか彼女の針だけあまりにも早く進んでいたように映る。もう「ちばけとったらおえんで」とか言ってくれなさそうだったし。それでも彼女の所作の細部に「掛橋らしさ=あの頃の記憶と重なるもの」を見つけてはそこに喜びを感じる、まさに全編が「思い出を語り合う」ような時間だった。
4期生楽曲だけを巡るセットリスト、それはもはや掛橋だけでなく「4期生」という物語の一つの終焉のように見えたくらいだった。実際、卒業生が増えていくにつれて、期のくくりというものは少しずつ消えていく。その話は置いておくとしても、特に4期生の原点のような最初の制服を12人が着て、掛橋一人が別の衣装(少し先の未来の衣装)を着たラストはなんとも美しく、そして少しばかり残酷な対比だった。まさしく「制服を脱いでサヨナラを」する演出だったとも言える(ここで、掛橋→星野みなみの関係を思い出さずにはいられない)。
その一方で、センター不在となった「Out of the blue」を自らセンターとして披露して継承し、そして自らがセンターを務めた「図書室の君へ」を歌い継いでほしいと「最後のわがまま」を残して歌い去っていったのは、4期生の物語が(ひいては乃木坂46の物語が)終わらないことを信じてのことだろう。ステージには13人しかいなかったが、16人の姿が見えたような気がしたのは私だけではないはず。
4期生の卒業はいつも「こんなに素敵な場所にいられたことを誇りに思えるように輝こう」(4番目の光)という言葉に対する答え合わせのようなところがある。掛橋は1時間弱のセレモニーの中で何度も言葉とステージを通じて「こんなに素敵な場所にいられたことを誇りに思える」ことを示していた。本人の意図とは無関係に「不幸な物語」を背負ってしまったからこそ、さらにはそれが多くの疑念や葛藤を生んだからこそ、それでもここは素敵な場所であった(ある)ということを強く訴えているように見えた。休業中も多くの支えを受けて、自分はまだまだアイドルを続けられるなと気づき、そんな「本望=goal」にたどり着いたと感じたことが、卒業という「決心のきっかけ」だったと語ったのは、自分からアイドル人生を手放すという意味を持ったこれ以上ないほど強い宣言だった。その言葉に何の嘘もないだろう。
そのような物語によって去りたいという覚悟を目の前にして、今わざわざ「美談にしている」などと水をかけるようなことを私には言えない。その水は常に手に持っておかなければならないようにも思うが、少しの間だけでもしまっておこうと思う。
最後になるが、今回のセットリストが杉山勝彦楽曲(4番目の光)から始まって杉山勝彦楽曲(図書室の君へ)で幕を下ろしたのは実に「乃木坂らしさ」を感じさせた。「君の名は希望」「サヨナラの意味」「きっかけ」といったメジャーな楽曲が演奏されることはなくとも、杉山楽曲の響きはあまりに「乃木坂らしさ」と深く結びついている。ただ、楽曲の面でyouth case楽曲(I see... および Out of the blue)と比べて圧倒的に「鳴っていない」印象も受けた。逆説的だが、そのような特徴も今回のセレモニーの「思い出感」を強めていた印象がある。「乃木坂らしさ」も「掛橋らしさ」も思い出の中にしか存在し得ない。でも、このステージはそれを追いかけるだけできっと良いのだとも思う。「思い出」とはまさしく愛の結晶であり、これからを生きる礎になるのだから。
大切な思い出って支えになるし、お守りになるし、居場所になる。そう思います。
(坂元裕二『anone』第1話)
(坂元裕二の書いたこのセリフ、ドラマを踏まえれば、そのままの意味で受け取るような名言では決してないのだが、今回だけはそのまま受け取ることを許してください)
日本から旅立つ彼女に、新天地での生活にたくさんの幸せがあることを願って、小沢健二「ぼくらが旅に出る理由を」聴いて…と言いたいところですが、今回は別の物語と重ねるように「ある光」を聴いています。
ご卒業おめでとうございます。一つだけ願いを書かせてください。顔色よく生きてくれ!(『プライベート・スーパースター』より)