ジェズアルドのテネブレ・レスポンソリウムが無性に聴きたくなる夜がある。特に聖木曜日の激情的な音楽に触れたくなる夜がある。今回は思い立ったように、レザール・フロリサン(ポール・アグニュー指揮)によるジェズアルドのテネブレ・レスポンソリウムを聴いた。
アルバムとしては、LectioまたはNocturnusが独唱されて、それに対してResponsoriumを演奏するという順で構成されている。レスポンソリウムは音楽的な「レスポンス=応答」であるためこのスタイルが正式なはずだが、毎回ちゃんと独唱が入るアルバムは初めてかも。また、レスポンソリウムの宗教音楽としての位置づけを正確に理解していないのだが、イースター直前のキリスト教として割と重要な時期の典礼で歌われるらしい。
少人数で歌われていく厳粛な趣のポリフォニーは実にルネサンス的なのだが、聴いていると随所でルネサンス音楽を逸脱したセンスを見せつけている。激情的な歌唱は良い意味で合唱らしくなさもある。合わせるというよりも自然と呼応しているという印象が近い。レザール・フロリサンの演奏は、キメるべきところでしっかりとキメているが、全体的には個々の声部の自在さを感じられたのが印象的だった。
無性に聴きたい夜に聴いているというだけでも高い評価になるわけだが、それを差し引いても実力を感じられる演奏だった。
Gesualdo: Tenebræ Responsoria, Feria Quinta
Les Arts Florissants, Paul Agnew
2023 / Harmonia Mundi / HAF8905363
★★★★☆(2024/8/23)
●Links: Presto, hmv, eclassical