Gramophone Awards 2024 古楽部門のノミネート作品。古楽ア・カペラ作品を数多く取り上げてきたカペラ・プラテンシスが今回取り組んだのは、ルネサンス期のポリフォニーミサの中でも最高峰とされている長大さと複雑さを誇る、ヤーコプ・オブレヒトのミサ『優しきマリア』。演奏時間は何と1時間近くかかる。現代から見れば1時間の楽曲など何も珍しくないが、当時としては相当な野心作だったという。
録音もタリス・スコラーズ(CDGIM032)やビューティー・ファーム(FB1905157)の録音があるくらい。一流しか手を出せないような大作なのは演奏を聴いていても感じられるところで、直後の世代であるジョスカンのポリフォニー・ミサなどと比べても一味違う難解さと重厚さがある。
当たり前のように前段を書いたが、カペラ・プラテンシスの演奏は今回初めて聴く。歴史も実力もあるグループであることは調べて知った。古楽に絞ったってまだまだ知らない人たちだらけであることを痛感する。知らないことがたくさんあることを認め、謙虚なリスナーであらねばならないなと戒めるような気持ちになる。
肝心の演奏についてだが、これがまぁ素晴らしくて何か感想を書こうという気にならないくらいだった。男声アンサンブルによるポリフォニーを多少は聴いてきた中でも、間違いなくトップクラスの完成度であろう。不思議なことに1時間も経った気がしない。この感覚こそがこのアルバムを聴いた感動を如実に表しているような気がする。専門的なことは何一つわからないし、聴いていても難しいなと思う部分こそあれど、確かに感動する音楽だった。もう少し耳を育てていけば、この演奏に対してもう少し色々なことが書けるようになるだろうか。
Jacob Obrecht: Missa Maria Zart
Cappella Pratensis, Stratton Bull
2023 / Challenge Classics / CC72933
★★★★★(2024/9/6)