まもなく9月が終わる。最後の水曜日も色々なリリースがあったのだが、今回は聴きそびれていたものの消化。良質なオルタナロックが並んだが、突き抜けて良かったのはひとひら、NAGAKUMOかな。
- ゲシュタルト乙女『仕事』
- Xamd『lifedrop!』
- xiexie『wellwell』
- Bialystocks「kids」
- goethe「sick!!!」
- Naive Superβ「On Cloud 9」
- Qnel「サマーエンドロール (feat. Emerald)」
- ひとひら『つくる』(2023)
- NAGAKUMO『EXPO』(2022)
ゲシュタルト乙女『仕事』
台湾出身と聞いて耳を疑った。日本語の歌唱が上手すぎるというのもそうだし、日本語の使い方も上手すぎる。言葉の反復が上手くて耳に残る。とはいえ、台湾出身なのに日本語が上手いみたいなことを考えるのは最初だけで、聴いていけばいくほど声やトラックなど、音楽的な魅力にも目が向く。日本のインディーズ・ロックと横並びにして普通に聴いてしまう。このEPに表現されているのは都会的な退廃というか、都会的な虚無というか。個人的には平日の東京の夕刻のことを考えていた。「蜃気楼」が結構強烈で、ラストに「仕事」で電車の音が聞こえてきたらもうそのまんま「飛び込んで」しまいそうなそんな虚脱感すら覚えた。あぁ良い。⑧
Xamd『lifedrop!』
エレクトロニックな音を中心に織りなされたサウンドスケープは、自然の響きも混じって素朴な美しさも備えている。「lifedrop」というのは造語のようだが、このタイトルからsyrup16gの「明日を落としても」を思い浮かべたのは意外と間違っていなかった気もする。どことなく死や希死念慮の匂いが漂う。こぼれること、落ちること、なくすこと、飛び降りること… そういう様々な「drop」の光景が思い浮かぶ。生活はかくも冷たいが、音楽は時折かくも優しく寄り添ってくれる。⑧
xiexie『wellwell』
東京発オルタナロックバンド・シエシエのデビューアルバム。ジャンルとしてはサイケな味わいがあるチル系のポップチューンといった感じだろうか。まぁ素人にはジャンルとかどうでもいいんだけど、なんと心地の良い音楽だろう。単にチルい音が鳴っているだけでなく、メロディアスでキャッチーなポップスとして聴けるくらいのなじみやすさ、そして美しさがある。素晴らしかった。⑧
Bialystocks「kids」
ビアリストックスのニューアルバムより先行配信。はじめて聴くバンドだったのだが、センスの光るメロディアスで美しいスローナンバーで気持ち良すぎて何度もリピートした。古めかしくもないけれど、妙に昔っぽいというか、懐かしいというか、洋楽あたりで聞き覚えがある気がするというか。耳は明らかに喜んでいるからきっと好きなんだろうな。⑧
goethe「sick!!!」
シティ感があってオシャレだなぁ。yonawoあたりの系統(そういえばソロになってから聴いてないな)。仕掛けの多い曲は嫌いじゃない。⑥
Naive Superβ「On Cloud 9」
これまた上質なトラックメイク。もう少し突き抜けてくる感じが欲しいところはあるが、意外と耳に残っている。何者なんだろう。⑦
Qnel「サマーエンドロール (feat. Emerald)」
夏の終わりにはメロウな曲が沁みる。最近だとえんぷていとかもそうだったけど、この曲も良いな。優しくも強さを感じる歌に魅了された。⑥
ひとひら『つくる』(2023)
シューゲイザー、ポストロック、マスロックあたりの響きを持ちながら、独自の色を魅せるウェルメイドな音楽に癒される一枚。冒頭の「つくる」が一気に加速して「国」へと高揚したままにシームレスに接続される流れが最高だったし(次にSeamlessという曲が続くのも面白い)、そこからラストの「こわす」に至るまで、各曲が魅力的なだけでなく、アルバムとしての流れがひたすらに美しかった。魅力的な声のヴォーカルも素晴らしい上に、このバンドはとにかくギターの使い方が魅力的。最近新しく聴いたミュージシャンの中では実力も魅力も頭ひとつ抜けていた気がする。名盤。⑨
NAGAKUMO『EXPO』(2022)
圧巻のソングライティング、そして圧巻の演奏に唸ってしまった。女性ヴォーカルのボイスが魅力的。別のプレイリストで聴いた「思いがけず雨」がお目当てだったのだが、他の曲も全体的に素晴らしい。たとえば「渚のメモリーズ」は歌詞のセンスが光っている。このタイトルは「潮騒のメモリーズ」を思い出してしまう(宮藤官九郎『あまちゃん』)のはさておき、記憶の移り変わりを歌っていくのが良いなと。あと面白いと思ったのは、何箇所かメロディーとフレーズの切れ目がズレていることがあって、そこがいい引っかかりを生んでいる。⑨