この九月はひたすら新しいものを聴いて、この雑記ブログを書きまくっていたが、十月はどんな月になるだろう。もう少しじっくりと聴く時間にしたい、なんてことを考えながら九月最終日のブログを脱稿する。今回のハイライトは九月最後のいい出会いだった宗藤竜太とFLiNR。
- ずっと真夜中でいいのに。『本格中華喫茶・愛のペガサス〜羅武の香辛龍〜』
- First Love is Never Returned『POP OUT! Ⅱ』
- First Love is Never Returned「Black or White?」
- 宗藤竜太「きみといっしょ」
- 諭吉佳作/men「天性のフラストレーション」
- Wool & The Pants『Wool In The Pool』(2019)
- トリプルファイヤー『エキサイティングフラッシュ』(2012)
ずっと真夜中でいいのに。『本格中華喫茶・愛のペガサス〜羅武の香辛龍〜』
Kアリーナ横浜での2024年5月のライブ録音。ずとまよはライブに行ってこそというのはよく言われているようで、私もずとまよを初めてちゃんと見たのが7月のフジロック(配信)で、あのライブが良かったからこそ好きになったのはある。ずとまよに限らず、ライブはその「場」に行って全身で浴びることが重要な気はするが、今の私には家で篭ってひっそりと聴くくらいがちょうど良くて、そんな人もライブの空気を楽しめるライブアルバムというのは一つの救いだったりする。「NEO炒飯」や「幻の五香粉」あたりの変則的なオリジナル曲、しっとりとした歌い上げが素晴らしかった「Ham」、アルバムの中でも(ライブの中でも)随一の熱狂があった「ハゼ馳せる果てるまで」、終盤の「マイノリティ脈絡」あたりからラストの強化版「暗く黒く」にかけての怒涛の畳みかけなど、聴きどころがたっぷりあった。裏を返すと、この一枚を聴いているだけでも結構疲れる感じ。⑨
First Love is Never Returned『POP OUT! Ⅱ』
長いバンド名だなと思っていたらFLiNRという略称があることを知った。なんかどこぞのジャーナルみたい(アカデミアの発想)。一聴した時点でもう最高なポップミュージックなので、売れるのは時間の問題だろう。コロナ禍の記憶を呼び起こすような「Twenty-Twenty」から幕を開け、圧巻のトラックメイクであった「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」「Unlucky!!」で個人的には最高潮。秋に聴くには「バックミラー」がちょうど良い。ラストの「People 365」もいい感じに胸に響く。⑨
First Love is Never Returned「Black or White?」
ファンク調のホーンからいきなり「オフィスビル併設のカフェ 現実と空想の境界線」という印象的な歌詞で始まる、ダンサブルで楽しいナンバー。おそらくコーヒーをブラックで飲むのか甘くして飲むのかというところに引っ掛けて色んな要素を歌っている。個人的に「分煙」を持ってきたのは面白いなと思っていて、白と黒を分ける象徴としての「分煙」に対し、煙ってまさに「グレー」なわけで「苦味と甘さは調和する」なと。この曲、オシャレなのに良い塩梅にダサい感じもするのが好きだし、なによりグレーを愛する私のためのような曲。⑩
宗藤竜太「きみといっしょ」
浦上想起とのコラボで知った名前だったが、なんともいい歌を歌うな… ギター1本で、まるで幼き子どもに語りかけるように温かく歌われる言葉に深く癒された。いなくても、近くにいるってことはある。目に見えなくても、そばに感じられることはある。たとえ非科学的と言われようとも、たとえ幻に過ぎないとしても、でももしもそういうものを信じることで生きられるのならば、やっぱり信じた方がいいんじゃないかなって思うんですよね。⑧
あえないひとはどこにもいない
いないから
さみしいひとなんかどこにもいない
宗藤竜太「きみといっしょ」
諭吉佳作/men「天性のフラストレーション」
更新頻度が他のミュージシャンと比べても高く、多作っぷりを見せながら、毎度独特な音を聴かせてくれる諭吉佳作/menの新作。リズムがしっかりしているが、メロディーは非常に不安定というか謎というか。少なくとも私の理解できる境地ではないのだが、不思議と心地が良い。日頃はストリーミングで音楽を聴くのでストリーミングに出してない諭吉佳作/menの曲にはYouTubeでしか聴けない特別感のようなものも味わっている。⑦
Wool & The Pants『Wool In The Pool』(2019)
このバンドはすごい。独特の虚脱感、そして浮遊感。聴いている私は麻酔がかかるように意識を失い、ここじゃないどこか、遠くへ遠くへと飛ばされていくような感覚すら覚える。「Edo Akemi」の歌詞がなかなか印象的で、調べてみると暗黒大陸じゃがたら(JAGATARA)のヴォーカルが江戸アケミであり、『南蛮渡来』というアルバムの一曲目(でも・デモ・DEMO)から歌詞を引用しているらしい。いい出会いをした。⑩
トリプルファイヤー『エキサイティングフラッシュ』(2012)
『EXTRA』からちょうど干支一周分前のデビュー作。「次やったら殴る」や「パチンコがやめられない」あたりを聴くと、トリプルファイヤーのスタイルはもうこの時期から出来上がっていることがよくわかる。根幹はもう完成していて、さすがに最新作の方が明らかな洗練を感じさせるのだが、こちらはこちらで味があって良い。むしろこの不安定感こそがトリプルファイヤーの世界観とは合っているかもしれない。「ガンダーラ」という名前の曲、最近どこかで聴いたなと思ったらチョコパだ。良き。⑧