What Didn't Kill Us

生存記録。レビューではなく日記。

2024年9月のバラエティ

2024年9月に地上波(TVer)、配信、YouTube等で視聴したバラエティ番組の中から印象的だったものを振り返るブログ。気づけば5回目。なんとなくタイトルも変えた。9月は「くだらない」お笑いをたくさん見て、それを楽しんだ一ヶ月だった気がしていて、振り返りながら星野源の「くだらないの中に」がずっと頭に浮かんでいた。

髪の毛の匂いを嗅ぎあって
くさいなあってふざけあったり
くだらないの中に愛が
人は笑うように生きる

星野源「くだらないの中に」

今月も5番組+次点の5番組を選んだが、選んだ番組は複数の放送回が印象に残っているものが多く、今回もかなりの原稿になってしまった。長い文章を書くのは面倒だが、なんだかんだ振り返るのを楽しめている自分がいる。毎度ながらネタバレあり。

1. トライアルマンデー「平成はよかった…2054」(9/2, テレ東)

個人的な嗜好にぶっ刺さった。架空の2054年のバラエティ番組を作ってしまって平成を振り返ろうというのが面白い。今月の番組の中でトップレベルのクリエイティビティを感じられた。

冒頭からいくら平成のB級芸能ニュースとはいえ、t.A.T.u.のドタキャン、王理恵の婚約破棄、手島優のサバ読みという悪意あるセレクトに笑ってしまった。2054年になってまでこの辺の話題を擦られてると想像しただけで面白い。せっかくなら夏川純のサバ読みも擦っておくべきか。それはさておき、それぞれの話題について2054年(元号は「永丸」としている)の、本当にありそうながら平成と大きく異なる驚愕の価値観を示していくフォーマットが面白い。たとえば、手島優のサバ読みについては、「自認年齢」やら「トランスエイジ」やらが当たり前となった永丸では問題にならない、など。本当にありそうだからこそ面白いし、せいやの未来予測のほうがナダルはフロリダの刑務所に入っているとか、粗品は噛みつきすぎて連れ去られたとか、より過激(本当にはなさそう)なのも笑ってしまった。

個人的に、ハリーポッターをAIが2行に要約した文章を読んだ永丸世代の若者が「おもしろかったー」って言った瞬間のせいやの「どこがやねん」など、永丸タレントのリアクションに対するツッコミが好きだった。30年後もせいやはこういうポジションで腑抜けた「永丸世代」を相手にしながらこんな感じで笑いをとってそう。正直、今回書いた他の番組と比べてももう少し笑えるポイントがほしかった気はするのだが、逆にこの絶妙な「つまらなさ」、さらにはB級ニュースやら名曲やらの絶妙に首を傾げたくなるしょぼ平成セレクトも含め、30年後、平成時代をよく知らないままに作られた、更にはコンプラガチガチとなってしまった永丸時代のバラエティ「らしい」のかもしれない。

トライアルマンデー、他の番組もそれぞれが個性的で、設定など色々粗いながらも学びもあって面白かった『総勢何人』(9/9)、新しい街ブラ大喜利番組だった『トマソンを愛でる』(9/23)の特に配信限定だった真空ジェシカ編、そして柴田理恵とマユリカ中谷が再現映像を見て流した涙をシャーレに集めて蒸発させて塩にして、それを撒くことでお清めする、という誰が考えたんだかとんでもなくハイセンスで「悪いなぁ」と思わせる面白さがあった『ナキヨメ』(9/30)など、なかなか見応えあるラインナップだった。また是非やってほしい。

2. ラヴィット!(9/20, 9/23, TBS)

くだらなく見えることも芸人が本気でやると面白くなるという観点で、9月の『ラヴィット!』は印象に残る企画が二つあった。

一つ目は9月20日(金)放送回、東京ホテイソン・ショーゴの持ち込みで行われた「マッチョカラオケ」対決。ぶら下がっている間に歌った分のカラオケ採点と、マッチョタレントの懸垂加点の合計で競うという、ルールには何の捻りもなく、どこかで見たことがありそうな企画。そもそもカラオケって途中でやめることの減点はそんなにないような気が… というマジレスはさておき、中盤でれなぁ(守屋麗奈)・青木マッチョのペアで青木マッチョが無双し、ほとんど勝者が確定した状況でのインディアンス・きむが凄まじかった。全員の期待を裏切って後先も考えずに大奮闘し、絶叫したり一緒に歌ったりしながらぶら下がり続けるのがあまりに面白かった。懸垂を一回もできてなかったので、何秒ぶら下がっても絶対に勝てないのに、完全にかかって頑張っちゃうきむに涙が出るほど笑った。最終的に落ちた後には腕に完全に力が入らなくなって、スタッフに水を飲ませてもらったり、次の太田・くっきーペアのところでぐったりしてるところを放映されていたりと面白い映像が続いて完全にMVP。あの面白さは定期的に思い出すかもしれない。

二つ目は9月23日(月)放送回、タイムマシーン3号・関が持ち込み、ぼる塾のあんり、田辺も参戦した「白ごはん我慢選手権」。白ごはんに合う高級おかずが次々と登場し、それを白ごはんをどれだけ我慢しながら完食できるかという対決企画。最初は茶番かな?と思ったら、本気で白ごはんを食べたくなるようなものばかり用意し、これ思ったよりも本気っぽいぞ?と思わせたが最後、結果的には三人が揃ってカンペを無視して、一心不乱にご飯をかきこむまでに至って、全員敗北という実質的な「茶番」に終わった。人間が美味しそうな食べ物に苦悶しながら耐えられなくて食べてしまう様子ってこんなに面白いのかという発見があった。『夜明けのラヴィット!』では「千と千尋」に喩えられていて、それも言いたいことは分かるんだけど、もっとシンプルに理由も説明できないけど面白かったんだよなぁと。藤井健太郎の『大脱出』でラーメンを投げるシーンを見たときの笑いと近い。

しかも、この手の番組で普通にやられる食レポはどうせ何を食べてもみんな美味しいって言うし、ワードもほとんど出尽くしてて大したこと言える人はいないわけで、こっちの方がよっぽど美味しさが伝わるまである。最高の役者が三人揃って、他のバラエティ番組でまず見ない変なことをやっていた。今月の『ラヴィット!』は意外なところに変な面白さが転がっていた。安直にビリビリ椅子を絡めることしか能がないような雑な企画も目立つ同番組だが、誠実に全力を見せる演者たちがときおり爆発していく姿はやはり見過ごせない。

余談ながら、TVer限定を勝ち取った「イリーガルモルック」のドキュメンタリーも予想以上に「いい番組」だった。ほっこりに行こうとして、ほっこりに行き切れない感じが好みだった。

3. チャンスの時間(9/15, 9/22, ABEMA)

【#283: ブチギレすぎて拡大SP!行列のできるブチギレ相談所】ABEMA
毎回「過去最高」を更新し続けている本企画。前回の相談員は、唯一初回から圧倒的なパワーを見せ続ける企画の立役者永野、途中から相談員として参戦し、回を重ねる中で独自の持ち味を出して永野と異なる角度でちゃんと笑いを生んできたCOWCOW多田、Aマッソ加納、そこにアンジャッシュ渡部が登場。この渡部の登場で相談員から相談員へのブチギレという新しい方向まで見られ、なんかもう前回を見た後にこれがピークかなという気がしていたのだが、その心配は杞憂に終わった。今回は加納OUTで松竹の風紀委員ことTKO木本がIN。そして、隔回での登場となっているさや香の宮迫渡部ムーブ(特に宮迫パロディの「天素の音」)にも磨きがかかり(しかも遂にご本人の前でやった)、今回は前回を超える「過去最高の回」となっていた。

面白いところを列挙しようとすると正直キリがないのだが、YouTubeの公式ショート動画(, , , , )で印象的なシーンはほとんど切り取られている(余談だが、公式ショート動画の編集が上手くなった気がする)。個人的に、渡部がかかっちゃって「週刊誌記者は運び屋や売人と一緒」という永野級の暴論を言い始めるくだりと、永野が渡部のあの記者会見を見て「バイクになるのかなコイツと思った」というあたりがいくらなんでも面白すぎた。誰もわざわざ言わないけど、先月の水ダウの某企画みたいに「見つからなくて」良かった。

【#284:臭すぎる!風呂キャンセル界隈集団訴訟裁判】ABEMA
スメハラという言葉が取り上げられたり、女性のフリーアナウンサーが男性の体臭に言及して炎上→解雇、なんてこともあった昨今。まじめに言えば、体臭を属性と絡めて言及することは歴史的には差別と絡んでおり、ハラスメント概念の中でも被害を無制限に訴えて良いものではなく、取扱注意のセンシティブなものであることが見逃されがち。さらに、今回ネタに挙がった「風呂キャンセル」はうつ病等の精神疾患の症状でもみられるもので、こちらも割と取扱注意の話だろう。とはいえ、この番組はセンシティブな話題を扱いながらも芸人たちの実力が発揮されており、エピソードトークの爆発力とそれぞれの役割を理解したワードの残し方、リアクションなどによって、この手の茶番の中でもトップレベルの面白さだったと思う。

強烈なエピソード、強烈なワードの多さに、面白かったポイントを挙げるだけでもキリがないのだが、全体的に原田の開き直りっぷりと紺野ぶるまと大悟の擁護が無茶苦茶で面白かった。個人的に最も笑ったのは、ノブのキラーパスから裁判長のさゆりんご(松村沙友理)が原田の靴下の匂いを嗅ぐくだりになったところ。さゆりんごの絶叫の後に、原田が「どっちだー」とあくまでも両方の可能性を残して、紺野ぶるまが「男性フェロモンを感じて、思わず女の声が出たのではないですか」的なエクストリーム擁護をかましたのが良かった。さゆりんごのリアクションだけでも面白かったは面白かったけれど、この畳み掛けが素晴らしかった。次点で、水虫を治したらもっと臭くなる病気に罹ったという不憫すぎるエピソード、イワクラの「お風呂側にキャンセルされている」という使っていきたいフレーズ、きんの「足跡が臭かった」あたりも挙げたい。終始しょうもないしとにかく下品なのだが、結局こういうお笑いが好きでしょうがない。

4. さらば青春の光Official YouTube Channel(9/21, YouTube)

【第2回馬狼ゲーム開催!!・・・のはずが大トラブルで前代未聞の展開に!!】YouTube
どんなバラエティ番組が好きですか?と聞かれたら、アドリブが多い予定不調和のバラエティ番組が好きと答える気がする。この世界にお笑いの教科書があったら、そこに書かれているのは「緊張と緩和」や「笑いは裏切り」とかなんじゃないかとよく言われるし、自分でもベタな回答だとは自覚しているけど、思ってもみないようなことが起こる瞬間というのは結局面白い。

さらばのYouTubeは企画力の高さが面白い回もあるのだが、ときどき企画がちゃんと確定しないままとりあえず走り出してみて、でも流れで「何かが起きてしまう」動画というのがあり、この回はまさにそういう面白さがある動画だった。天候による馬場不良で馬狼が中止になり、急遽開催された「芸人が森東の事務所に来る順番」に関する予想レース。ルールが定まらないままとりあえずレースが始まり、誰が来るのか、何が起きるのか、というドキドキ感、当たったときの盛り上がり。そして、参加する人が増え、ルールが追加されていく中で、それぞれの芸人がそれぞれの役割を見つけていき、どんどん面白さが増していく。

ここで全てを書くことはできないが、ギャンブラーらしい立ち回りでレースの面白さを一気に高める岡野、対照的に確実にお金をとりに行った日本一おもしろい大崎、みなみかわのただの暴力、ブクロの魅力的な提案と相変わらず不憫なザ・ギースの尾関、そして最後の最後、ウイニングランが確定したかと思われてからの衝撃の展開。このチャンネルでもポンコツっぷりを見せてきた、かもめんたる槙尾の見せた奇跡のオチ。何もかもができすぎている。

案件となって、丁寧に仕掛けを増やして面白くしていた「第二回馬狼(9/28)」とは対照的な動画となったが、どちらが好きかというのは人によるだろうか。私はこちらを推したい。

5. 内村プロデュース(9/28, テレ朝)

内村光良の還暦祝いとして一夜限りの復活を遂げた内P。リアルタイムでは一度も見たことはなく、今回のSP版の放送に先駆けてTVerで配信された当時の番組をちまちま見たが、不思議な温かさと厳しさが同居していて驚いた。最近の番組だと『有吉の壁』、或いは極限に追い込むことで面白い反応を引き出そうとする『全力!脱力タイムズ』あたりも近いと思うが、その二番組ともやはり違う。この言語化が適切かは分からないけれど、失敗しても問題ないしフォローもある環境ながら、リスクを取ってでもとにかく面白いことをしたい、この場にいる内村さん、そして芸人仲間を笑わせたい、と身を削って挑戦していく姿が多く見られる番組だったのが印象的。エリートっぽくないというか、力技でねじ伏せることも多いし、勝負とは言っても本当に勝負したいわけではなく基本は「笑い合いたい」が根底にある、まさに男子中学生の遊びの延長のよう。それでも、スベッてもスベリ笑いには安直に行かないシビアさもある。

どんな風に復活させるのだろうと思っていたがノスタルジックでエモい方向ではなく、真正面からやれる範囲で「令和にあの頃のような温かくも厳しい内村プロデュースをやる」というスタンスがとても良かった。「出てた芸人」はさまぁ〜ずに有吉弘行、TIM、バナナマン、おぎやはぎ、アンタッチャブル、そして出川哲朗に土田晃之、ふかわりょうと顔ぶれが強い。実際、笑いの取り方もやっぱり凄まじく、有吉弘行やさまぁ〜ずあたりの打率の高さは正直見ているこちらまでビビるくらいだった。「見てた芸人」は圧倒され気味ではあったが、それぞれが失敗もしながらなんとか食いついていたのが印象的。荒いこともやりながらなんとか面白いことをしたいと身を削る様が、当時の「出てた芸人」たちと重なった。コンプラ的に放送できないネタに手を出しまくったさらばも「放送できない」ということが放送されていることは十分に栄誉だったと思うし、パンサーやハライチ澤部、狩野英孝、モグライダーなど、随所での奮闘が十分印象に残った。企画でもさらば森田宅をしっかりめに荒らしたり、露天風呂でのだるまさんがころんだをできるのが良かったし、そこでもノスタルジーに走らず本気の「団体芸」が見られたのが面白かった。

TELASA限定で配信されている特別版も面白い映像がたくさんで、撮影の裏側や参加芸人のコメント、地上波に出せなかったレベルのエロネタや尺の都合でカットとなった大喜利なども収録。それらも全て総合して、やはり猫男爵(有吉弘行)がMVPだったかな。有吉弘行はモノボケも大喜利もずっと冴えていたし、結局こういう有吉が一番見たいんだよなぁと。

今秋復活!『内村プロデュース』は何を変え、何を残したのか(てれびのスキマ) - エキスパート - Yahoo!ニュース

次点(アメトーーク、くりぃむナンタラ、有吉クイズ、フィルムエストTV、イワクラと吉住の番組)

令和のバラエティ番組、コンプライアンスは大切だし、そのほかにも色々な制約はあるが、それでも萎縮せずに今やれるくだらないことを全力でやる。そんなバラエティ番組の、芸人の、熱さを感じた番組に触れたい。

まずは『アメトーーク!』の「出川哲朗・還暦ナイト」(9/5, 9/12, テレ朝)。特に後編で放送された出川の原点でもあるお笑いウルトラクイズを再現する企画が印象的。盟友・ダチョウ倶楽部に加え、パンサー尾形をはじめとする令和でも御用達のリアクション芸人、さらに相席スタート・山添のような珍しい顔も。なんというか、昨年放送された『プロフェッショナル』の出川哲朗回のB面のような内容であり、みんなでシャワーを浴びる瞬間が一番幸せって(確認してないけど)そのまま同じことを言っていた気がする。演出の影響もあるだろうが、ずっと楽しそうだったのが印象的。うまく噛み合わないせいやとジモンさんのくだりが面白かった。

『くりぃむナンタラ』の「丸刈り芸人渋滞を考えよう」(9/18, テレ朝)もフワッと始まった割には異様に面白かった。そもそも「丸刈り」の定義から曖昧で、スキンヘッド或いは「ハゲ」と言われる部類の芸人が多め。「丸刈り」に一番合致していそうな髪型の安村が、吸盤がくっつかず苦戦する展開がツボだったが、特にすごかったのは第三競技の丸刈りホッケー。そもそも丸刈りのメリットもわからないし、真ん中の線を超えてもいいとなってからはルールもぐちゃぐちゃで、正直企画としての意味は何一つわからなかったが、上田が髪で攻撃するところなど腹がちぎれるかと思うくらい笑った。「丸刈り芸人」たちが頭を擦り合わせる様、理由はわからないけれど、衝撃的な面白さだった。

『有吉クイズ』(9/15, 9/22, テレ朝)も相変わらず面白かった。見るようになってからの歴は浅いのだが、個人的にツボが合うことも多くてこのブログでも何度か挙げている。今月はいつものLINE既読チャレンジを発展させた「返信ワードビンゴ」で「お笑いワンピース」がどんどん加速していった回(9/15)とみちょぱ最終回で相変わらずのエロネタ三昧だった回(9/22)が印象的。特に後者は、女性に対する下ネタも自粛気味の昨今のバラエティの中で、むしろ清々しいくらいにエロ、エロ、エロ。みちょぱの使っているパジャマを当てるくだりでのサウナっぽく風を送るところとか、マリックさんのエロ・イリュージョンで赤いパンティ投げるところとか、どぶろっくの贈る歌での「裏被りだね 皮被りだよ」とか見どころだらけだった。

『フィルムエストTV』(9/13, YouTube)の「友近さん&モグライダー芝さんと〝あの頃〟っぽいサスペンスドラマを撮ってみた」もバラエティに分類して良いのかは少し迷うが、稀有な作品だった。このチャンネルの存在は数年前から知っていて、昭和っぽく令和を映すという虚実の境界線をぼかした動画づくりがツボだったのだが、さすがに今回の動画はよくできすぎていた。いわゆる「バラエティ的な」面白さとは違うかもしれないが、意味深な友近の表情、要るのかも分からないお色気、そして意味もなく崖に行く定番の展開などなど、ここまで再現度が高いと笑っちゃう(と言っても私自身は元ネタの二時間ドラマにそんなに造詣はないのだが)。モグライダー芝の船越っぷりには何度も爆笑したし、友近と芝のやりとりがずっと素晴らしくて、「一旦整理」をしまくるのがツボだった。ミステリーとしての粗さは別に(本家はどんなもんだったかな)、ドラマとして普通に見れる仕上がりだったと思うが、それでもこんなに笑っちゃった以上、きっと本家でも笑っちゃうんだろうな。

最後に。ジョンソン、オドハラといった肝入りとされていたバラエティ番組が短命で終わりを迎えたこの9月(特に見てもなかったが)。ここでは『イワクラと吉住の番組』の最終回(9/17, テレ朝)の話を。バラバラ大作戦は改変期にはいつも賛否両論、阿鼻叫喚がある。令和ロマン・くるまがバラバラ大作戦の各番組は「リアルイベントでマネタイズするためのオープニングVTRのようなもの」だと評していたことも記憶に新しい。テレビは面白いことだけを追求できるわけではなく、様々な制約の中で変化を強いられていく、そんな無常さを感じさせることも多い。言い換えれば、資本主義と競争社会の象徴のような放送枠である。思えばイワクラ吉住も「昇格」を経て、色々な変化を強いられ、そして良さを失っていった番組の一つだったような気もする。

その最終回に、イワクラ吉住の番組開始当初のカラーとも二人のキャラクターともほぼ真逆の口うるさい男性芸人を大量にゲストに迎え、番組の空気感をぶち壊した企画「ふまんだらけ」をチョイス。イワクラや吉住が喋るパートより、森香澄などの番組が終わるの寂しいです〜みたいなトークパートより、井口や永野、くるま、しんいちあたりを中心とした男性陣の愚痴の方がずっと長く印象に残る構成で、清々しいほどに「番組を破壊して」幕を下ろした。バラバラ大作戦の最終回は自分が見てきた中では『ランジャタイのがんばれ地上波!』の「終王ノブ」が至高だと思っているが、それに肉薄するような面白さと切なさがあった。華々しいフィナーレではなく破滅的なフィナーレ。「イワクラ吉住」が粉々に砕け散った跡地には、ターゲティングの勝利と言うより他ない「夫が寝たあとに」が入る。無常だ。余談ながら「ふまんだらけ」はこれはこれで面白い企画なので、どこかでこれだけでもやってほしいとも願ってしまう。