最近は完全に合唱のアルバムを追いかける熱は冷めてしまったが、それでも好きな合唱団が新作をリリースしたときなどには余熱で聴いている。今回もタリス・スコラーズが最新作を出したと知って、とりあえず何も考えずにライブラリに追加して再生ボタンを押した。今回、タリス・スコラーズが取り上げたのは、イギリス・ルネサンスの初期、ヘンリー7世とヘンリー8世の治世の中で最も有名で影響力のあったロバート・フェアファックス。フランスのジョスカンと同年代の作曲家で(ジョスカンと同じく2021年が没後500年)、トマス・タリスよりも前の時代、イートン・クワイアブックの時代とタリスの間あたりに位置する重要な作曲家らしいのだが、ざっと調べたことを踏まえると、この作曲家をこれまでタリス・スコラーズが取り上げていないというのは少し不思議な気もする。調べてみると多少の録音はあるが、かなり埋もれてきた作曲家であることは間違いない。
イギリス・ルネサンスらしく、対位法的に複雑で凝っているというよりもどちらかと言えばハーモニー的な聴かせどころの多いポリフォニーが並んでいるような印象を受けた。声部は多いところでも5声だと思われるがかなり分厚く音が鳴っており、また旋律も非常に優美で、華麗な雰囲気を醸しながらも実にエモーショナルな響きが良い。細かいことを言うとラストのAmenが全体的に良い味を残していた。
- Fayrfax: Maria plena virtute
- Fayrfax: Ave Dei Patris
- Fayrfax: O Maria, Deo grata
- Fayrfax: Aeternae Laudis Lilium
Robert Fayrfax: Maria plena virtute & other votive antiphons
The Tallis Scholars, Peter Phillips
2024 / Gimell: CDGIM054
★★★★☆(2024/11/2)