What Didn't Kill Us

生存記録。レビューではなく日記。

Mozart: Requiem / Il Gardellino, Vlaams Radiokoor

今日はモツレクを。Apple Music Classicalで調べてもあまりに録音が多すぎて、一体どれから聴いたものかとなってしまうのだが、そういう意味で新作は「新作だから」という理由があるので、結局すべてが横並びのストリーミングの時代でも手を出しやすい。今回のモツレクはファン・レイン指揮で、ベルギーから古楽器楽団イル・ガルデリーノとフラマン放送合唱団の演奏で。

ピグマリオンの演奏で聴いたときにはなぜかしなかったのだが、今回はWikipediaでモツレクについて検索した。余談だが、かつてはWikipediaの信用性は低いなどとよく言われたが、真偽が怪しい情報だらけのインターネット空間の中でWikipediaは一応は相互監視と訂正が行われ、出典も示されている場となっている以上、相対的にマシだとは思っている。もちろん信じすぎるのは良くないが。

Wikipediaを読みながらモツレクが未完の作品で、モーツァルトの助手であったジュスマイヤーの補筆以外にも多くの補筆が行われていることを知った。

読みながら思ったことだが、これからもう少しすればAIにモーツァルトの全譜面を学習させて、補筆を行わせる時代が、もっと言えばAIによる補筆こそが最も「モーツァルトに近い」と受容されるような時代が来るのではないか。AIはいずれ人間のような主観や個性を持たない中立な「神」のようにみなされていくのではないかとは常日頃から思っているわけだけど、今回の例で言えばモーツァルトの作曲様式などがデジタル化(数値化)されて、そうして「数値情報」となったモーツァルトをアウトプットするように「補完」されるのではないか。

そして、良い悪いは別としても、やっぱり私たちはそれを聴いたときに(少なくともAI補作であることがブラインドされていれば)「感動できてしまう」ような気もしてしまう。かつての佐村河内守騒動や、あるいは『芸能人格付けチェック』のような番組を見れば分かるように、音楽の受容なんて多くの人にとって所詮「そんなもん」なのである。

ちなみに、AI作曲については久石譲も興味深いコメントを出していたことを思い出す。

そんなことを書いていたら、あっという間に一周聴き終えてしまった。フラマン放送合唱団の充実した合唱、ソリストたちの柔軟で表情豊かな歌、もちろんそこも聴きどころだが、この録音はイル・ガルデリーノの演奏が素晴らしい。HMVの商品紹介にも書いてあることを言うのは癪なのだが、確かに器楽が魅力的な演奏だなというのが正直なところだった。丁寧に表現されているが、小さくまとまることはなくとてもエネルギッシュで好感の持てる演奏。レクイエムを終えた後に、アヴェ・ヴェルム・コルプスがアンコールのように優しく届けられるプログラムも良い。良い時間だった。

  • Mozart: Requiem in D Minor, K. 626
  • Mozart: Ave verum corpus in D Major, K. 618

Mozart: Requiem
Il Gardellino, Vlaams Radiokoor, Bart Van Reyn, Ilse Eerens (soprano), Barbara Kozelj (alto), Kieran Carrel (tenor), Andreas Wolf (bass)
2024 / Passacaille: PAS1131
★★★★☆(2024/11/3)

○Links: Presto, HMV, highresaudio

Mozart: Requiem

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