What Didn't Kill Us

生存記録。大したこと書いてないので。

My Best Songs of November 2024

月間のマイベストも5回目。音楽の聴き方がなかなか定まらない1ヶ月で、それは私個人の日常が少しだけ変わったからという面もあるのだが、良い方向に転んだばかりではない。環境や状況は少しずつ変わっているが、12月もできれば変わらずに音楽を聴き続けられたら良いな。

今月のアルバム(2024/11)

先月に引き続き,今月よく聴いたアルバムを四枚選出して短評を書いた。

①PAS TASTA『GRAND POP』(2024)

シングルが先行リリースされていた時から一曲一曲それぞれ魅力的に煌めいていたが、それがアルバムとして順に並ぶと、『GRAND POP』という車を構成するパーツとしての役割を果たしていることがすぐに理解できる。そして、車が出来上がるとエピローグの「THE CAR」で次の地平へと旅立っていくのだ。アップテンポな曲の多いPAS TASTAがラストにこのメロウなバラードで「はやさの中にしか おれはいないのだろうな」と歌うところにグッとくる。高度化の進む音楽シーンの中で、懐かしいないし往年のJ-POPらしいこの曲を持ってきたところに、PAS TASTAの矜持を見た気がする。

Grand Pop

Grand Pop

  • PAS TASTA
  • J-Pop
  • ¥2037

②田中ヤコブ『ただようだけ』(2024)

ぬけがらの海
暗がりで消えた僕のライター
おぼつかない足下にそっと
見えなくていい
嘘でも明かりを灯していたい

田中ヤコブ「ぬけがらの海」

私が拙い言葉を尽くして説明するより、このA面の第一曲の冒頭を引用する方が、はるかに雄弁にこのアルバムを語れそうな気がする。この一節が届く人には田中ヤコブの音楽が沁みるだろうと確信できるし、田中ヤコブが歌っているのは一貫して「こういうこと」だ。これぞロックだろう。今回のアルバムは二枚組で、A面は比較的キャッチーで親しみやすい一方、B面は田中ヤコブらしさを濃く感じられる作品が多い。B面後半の「釣れない釣りに行く理由」という曲で「気長に待とう」と歌っていることが象徴的だが、なにかと強迫的な時代にオルタナティブな生き方を考えられる気がする。

Think Yourself, Please (Side A)

Think Yourself, Please (Side A)

  • 田中ヤコブ
  • J-Pop
  • ¥1833

Think Yourself, Please (Side B)

Think Yourself, Please (Side B)

  • 田中ヤコブ
  • J-Pop
  • ¥1833

③Homecomings『see you, frail angel. sea adore you.』(2024)

月末にリリースされた本作、自分の中でまだ咀嚼しきれていない部分が大いにあるが、すでに繰り返し再生していることには違いない。夢想的なシューゲイズはまさに天使のような温もりのある響きがする。タイトルに「海」という生命の誕生と終焉を感じさせるものが入っていることも含めて、このアルバムは妙に人生観というか生命観を歌っているような印象を受けた。光り輝くような音は、幸福というよりはむしろ悲哀の煌めきを歌っているようだ。いま書けるのはこれくらいのことしかないが、このバンドのことをまともに知らなかった自分が、理由もわからず繰り返し聴いてしまうような、そんな吸引力のある作品だった。

see you, frail angel. sea adore you.

see you, frail angel. sea adore you.

  • Homecomings
  • ロック
  • ¥2139

④Hedigan’s『Chance』(2024)

SuchmosのYONCEが率いるロックバンドによる1stアルバム。カッコ良さとクールさと脱力感とエモーショナルさとノスタルジアと、そういう色んな「感情」が混ぜこぜに引き出されるような一枚だった。月間のマイベストに挙げるくらいの完成度かと言われると結構迷ったのだが(音楽的にクオリティが高いなとか面白いなと思った作品は正直他にもある)、11月を通して割と繰り返し聴いたことは間違いなく、温度感がいまの自分とよく合っていたんだろうなぁと思う。

Chance

Chance

  • Hedigan’s
  • ロック
  • ¥2139

次点
  • Mei Semones『Mei Semones (Audiotree Live)』(2024)
  • ゆうさり『星をつぐ人』(2024)
  • Shöka『Misaligned Face』(2024)
  • 高山燦基『掬ぶ』(2023)

他にも挙げたいアルバムはキリがないくらいにあり、ニューリリースに絞っても、安部勇磨、小雨ちゃん、ハンバートハンバート、細野晴臣、んoon、ass_atte、Penthouseなどそれぞれの良さがあったのだが、個人的な琴線に深く触れたものを優先的に選んだ。どちらかといえば夜に聴きたい音楽が並んでいる気がする。

2024年11月の楽曲リスト

月前半は少し昔のアルバムにも手を出したりと割と柔軟だったが、後半はニューリリースを追うのにいっぱいいっぱいになっていたな。いい出会いが多くあった反面、個々の曲をそんなに聞き込めなかったのは反省点。音楽のほどよい聴き方がなかなか定まらない。絞ることに苦戦したとも言えるし、逆にもっと絞れたような気もするが、今月も50曲のリストを作った。

最新(2024/11)
  1. 安部勇磨 - みんなで歌いましょう【Hotel New Yuma】
  2. 色々な十字架 - GTO【1年生や2年生の挨拶】
  3. 温泉マーク - ねんねんころりよ
  4. キセル - 縁歌
  5. グソクムズ - 離れていたって
  6. 小雨ちゃん - 軽蔑【Wraiths】
  7. 田中ヤコブ - ぬけがらの海【ただようだけ (Side A)】
  8. 田中ヤコブ - 暇ゆえに【ただようだけ (Side B)】
  9. 田中ヤコブ - 釣れない釣りに行く理由【ただようだけ (Side B)】
  10. ニャホ - めがねどこめがねどこ【放蕩息子は帰らない】
  11. 秦基博 & 草野マサムネ - ringo【HATA EXPO】
  12. ハンバート ハンバート - トンネル【カーニバルの夢】
  13. 細野晴臣 & mei ehara - 住所不定無職低収入【HOSONO HOUSE COVERS】
  14. 松木美定 - 逆らう羽
  15. 名誉伝説 - ルビを振れ
  16. 森山直太朗 - アルデバラン (Live at 両国国技館 2024)【20th アニバーサリーツアー『素晴らしい世界』in 両国国技館】
  17. ゆうさり - ほころび【星をつぐ人】
  18. 揺らぎ - Oppressed
  19. 米津玄師 - Azalea
  20. 和久井沙良 - Patterns
  21. んoon - Kaiya【FIRST LOVE】
  22. ass_atte - アンダートゥ【To be in Hell is to drift: to be in Heaven is to steer.】
  23. Hedigan's - 再生【Chance】
  24. Homecomings - torch song【see you, frail angel. sea adore you.】
  25. Laura day romance - Amber blue
  26. Mei Semones - Kemono (Audiotree Live)【Mei Semones (Audiotree Live)】
  27. Penthouse - Taxi to the Moon【Laundry】
  28. Penthouse - アイデンティファイ【Laundry】
  29. SACOYANS - サモトラケのニケ【SUN】
  30. Velludo - Candy Rain【Between The Lines】
準新作(2024/1~2024/10)
  1. 井上園子 - 三、四分のうた【ほころび】
  2. 大石晴子 - サテンの月
  3. 角銅真実 - i o e o【Contact】
  4. 北村蕗 - blue sight【500mm】
  5. 小雨ちゃん - 一角獣【CURE】
  6. さとうもか - 予定【ERA】
  7. ゆうさり - 朝の清冽【ほとり】
  8. iVy - クラスルーム【幽泳プログラム】
  9. PAS TASTA & 清 竜人 - ISEWAN【GRAND POP】
  10. PAS TASTA - THE CAR【GRAND POP】
  11. Shöka - till head for delight【Misaligned Face】
  12. UlulU - マイマイ蛾の来襲
旧作(~2023)
  1. 安部勇磨 - ありがとさん【ファンタジア】
  2. 高山燦基 - 壜【掬ぶ】
  3. Lamp - 最終列車は25時【恋人へ】
  4. Lamp - 朝靄の中を【一夜のペーソス】
  5. Mei Semones - Muchuu【Tsukino】
  6. The Novembers - かたちあるもの、ぼくらをたばねて【The Novembers】
  7. The Novembers - 今日も生きたね
  8. The Novembers - ブルックリン最終出口