セルゲイ・ラフマニノフの「徹夜祷」(All-Night Vigil / Vespers) は毎年のように録音がリリースされている。2023年も数枚のアルバムがリリースされたが、中でもクラリオン合唱団 (アメリカ) × スティーヴン・フォックスによるこの一枚は、第66回グラミー賞(89番を参照)にノミネートされている。
数多の録音がある「徹夜祷」だが、爽やかな仕上がりとなっているものと、ロシア音楽らしい深みがあるものに大別される印象がある。
今回のクラリオン合唱団による一枚は全体としては爽やかだが、ところどころ(特に強奏部で)ロシア音楽らしい深みも感じられる仕上がり。細かいパッセージを含むフレーズの滑らかさ、弱奏の繊細な美しさが特に逸品である。5、6曲目とか12曲目あたりが印象的。
正直、強奏がところどころ痛いなとは思ってしまったが、それを引いてもかなり良い一枚だと思った。
Rachmaninoff: All-Night Vigil (Vespers)
The Clarion Choir, Steven Fox
2023 / Pentatone (PTC5187019)
Links: Presto, HMV