What Didn't Kill Us

生存記録。レビューではなく日記。

2024

Faure: Requiem - Gounod: Messe de Clovis / Le Concert Spirituel

バズるということが評価され、一過性のコンテンツが氾濫する世の中ではあるが、最近はバズった何かよりも長く受け継がれてきたものにロマンを感じることが増えた。それは流行りの「レトロ趣味」ということでもなくて、長く受け継がれてきたものには長く受け…

Elgar: The Dream of Gerontius / Gabrieli Consort and Players

今年のグラモフォン賞を受賞した作品で、他の年間賞の候補リストでもたびたび名前を見かけているのが、ポール・マクリーシュとガブリエリ・コンソート&プレイヤーズによる、エルガー作曲のオラトリオ『ゲロンティアスの夢』。一時間半というボリュームを見…

Dvořák: Stabat Mater / Chorwerk Ruhr

クラシック音楽の著名な作品が生まれた背景について「深い悲しみの中で生まれた」のようなことが書かれていることがある。ドヴォルザークの『スターバト・マーテル』もそうで、幼い我が子を相次いで亡くした時期に作曲されたためそのようなことを言われてい…

A Monk's Life / The Brabant Ensemble

ブラバント・アンサンブルとスティーブン・ライスによる新作は『修道士の生涯』と題し、「16世紀後半にベネディクト会またはアウグスティヌス会の修道院に入った青年の、修道院への入会、最初のミサの儀式から、修道院長への選出、最終的な死、そして天国に…

Mozart: Clarinet Concerto in A Major / Sabine Meyer & Basel Chamber Orchestra

学生時代、クラリネットをやっていた頃によく聴いたのは、ポール・メイエ、カール・ライスター、アレッサンドロ・カルボナーレ、そしてザビーネ・マイヤーあたりだった。まだサブスクもなかった当時、ヤマハに行って輸入CDを買ったりもしたな。今回聴いたの…

Elements / Kölner Vokalsolisten

2024年にデビュー作をリリースした合唱団の作品は割と聴いてきた。Ensemble Altera、ベルリン新室内合唱団、Echo Vocal Ensemble、Voices of Concinnity、あとはSpiritoもそうだと思う。ざっと見ただけなので他にもいるかもしれない。全体的に実力派揃いであ…

Messe pour double chœur / Schweizer Jugendchor

スイスの青少年合唱団がマルタンをはじめスイスの作曲家の作品を取り上げた一枚。アルバムのメインを飾っており、私のお目当てでもあるのはマルタンの『二重合唱のためのミサ』。意外と録音はそれほど多くもない同曲。それでも今年は Spirito のアルバムや抜…

Jeff Beal: The Salvage Men / Eric Ericson Chamber Choir

スウェーデンの実力派エリック・エリクソン室内合唱団が久しぶりに新作をリリース。今回のアルバムは、ハリウッドの映画音楽などを多く手がけてきた作曲家ジェフ・ビールの「The Salvage Man」をはじめ、バーバー、ネルソン、ウィテカーといったアメリカの現…

Le Grand Mystère / Ensemble la Sportelle

フランスの合唱団Ensemble la Sportelleが新作をリリース。タイトルの「Le Grand Mystère」はラテン語では「O Magnum Mysterium」、日本語に直せば「大いなる神秘」という意味。本作の中にも同名曲が含まれているが、キリストの降誕、聖母マリアへの畏敬を表…

Blasius Amon: Sacred Works / Huelgas Ensemble

いつの間にかApple Music Classicalの中でブックレットを読める作品が出てきた。以前は別のサイト(eclassical、最近だとhighresaudio)を検索していたのでこれはありがたい流れ。レーベルごとに提供しているところとそうでないところがあるということっぽい…

The Waiting Sky / Anna Lapwood, Pembroke College Girls’ Choir

貪るように合唱音楽を聴取していた時期は終わったが、ニューリリースで気になったものは一応定期的に確認している。今回は、作曲家でもあるアナ・ラップウッドが指揮するペンブルック・カレッジ女声合唱団の演奏による現代作曲家の女声合唱作品集。一応のお…

The Heart Beat Sessions / The Sixteen

今回はシックスティーンの最新EPをチョイス。ウォーロック、マクミラン、そしてオスピー(オスカー・ピーターソン)という顔ぶれで5曲21分。シックスティーンの魅力的な合唱もさることながら、今作はとにかくヴァイオリンの芳醇な響きが素晴らしく、合唱だけ…

Dance of Death / Nfm Choir

フーゴー・ディストラーという作曲家のことをよく知らなかったのだが、20世紀前半のドイツで活躍した教会音楽家で、ナチス政権下では退廃音楽とみなされ、1942年に若くして自殺したらしい。今回のアルバムのメインはディストラーが1937年に作曲した、無伴奏…

Fauré: Requiem (1888) / Chœur de Chambre de Namur, Millenium Orchestra

合唱のアルバムに飽きてきた、なんてことを書いた割には、11月冒頭は合唱のアルバムによく手が伸びた(公開は下旬だが)。今回は2024年が歿後100年のフォーレ。合唱のナミュール室内合唱団、管弦楽のミレニアム・オーケストラ、指揮のティボー・レナールツ、…

Close Harmony / The King's Singers

キングズ・シンガーズの新譜が出たのを知っていながら、少し長めということもあって後回しにしていたのだが、ようやく再生ボタンを押した。今回は2019年からリリースされてきた「Library」シリーズ4作のハイライトと新録音を収録した全31曲のプログラム。ビ…

Mozart: Requiem / Il Gardellino, Vlaams Radiokoor

今日はモツレクを。Apple Music Classicalで調べてもあまりに録音が多すぎて、一体どれから聴いたものかとなってしまうのだが、そういう意味で新作は「新作だから」という理由があるので、結局すべてが横並びのストリーミングの時代でも手を出しやすい。今回…

Fayrfax: Maria plena virtute / The Tallis Scholars

最近は完全に合唱のアルバムを追いかける熱は冷めてしまったが、それでも好きな合唱団が新作をリリースしたときなどには余熱で聴いている。今回もタリス・スコラーズが最新作を出したと知って、とりあえず何も考えずにライブラリに追加して再生ボタンを押し…

Choir Concerto - Schnittke, Vedel and Bortniansky / SWR Vokalensemble

今回はシュニトケ、ヴェーデル、そしてボルトニャンスキーの「合唱聖歌コンチェルト」。こういう音楽はどうしても本場ロシアの合唱団の演奏で聴きたいなと思ってしまうが、今回はロシアの合唱作品集の録音実績もあり、なおかつ低声が充実していて重厚なサウ…

A New Spirit: An Album of Première Recordings / Caritas Chamber Choir

カリタス室内合唱団の2024年リリースの新譜は、ジェイムズ・マクミラン(スコットランド)、ヘンリク・ダールグレン(スウェーデン)、フィリップ・クック(イギリス)、アンドリュー・スミス(イギリス、ノルウェー)という四人の現代作曲家の作品集。マク…

Strauss: Eine Alpensinfonie / Berliner Philharmoniker & 小澤征爾

「僕がいちばん好きな時刻は夜明け前の数時間だ」と征爾さんは言っていた。「みんなが寝静まっているときに、一人で譜面を読み込むんだ。集中して、他のどんなことにも気を逸らせることなく、ずっと深いところまで」 村上春樹「僕の夜明け前の同僚ーー小澤征…

Ex Nihilo - Polyphony Out of the Order of Things / Graindelavoix

実力派の古楽アンサンブル・グランドラヴォアは今年の上半期にブリュメルの『地震ミサ』のライブ録音をリリースしているが、嬉しいことに今年はもう一作リリースが。今回のアルバムのタイトルは『無より』という意味で、「無からの創造」という神学的概念に…

Benevoli: Missa Benevola / I Fagiolini

最近は軒並みポップス作品ばかり聴いていたので、久しぶりに合唱のアルバムを聴く。ストリーミング(Apple Music Classical)で聴いているので時間さえあれば際限なく聴けてしまうのだが、そのような選択肢の過剰さが何を聴くかを選べなくさせてしまうような…

in the midst / Sansara & United Strings of Europe

サンサーラ(合唱団)とユナイテッド・ストリングス・オブ・ヨーロッパ(弦楽アンサンブル)がタッグを組み、合唱と弦楽によって安らぎの現代音楽を辿る一枚。メインはC.ショウ作曲の合唱・弦楽作品『To the Hands』と、H.フーリー作曲の弦楽作品「The Journ…

Mozart: Requiem / Pygmalion

ピグマリオンがモツレクの録音をリリースするならこれを機にモツレクデビューしようと一ヶ月ほど前に決めて、今回人生初のモツレクを聴いた。ブラームス『ドイツ・レクイエム』など一部の例外を除いて大曲の合唱作品はあまり聴かないのだが、ピグマリオン×ラ…

Bruckner, Martin: Une messe imaginaire / Spirito

ブルックナーのモテット4作とマルタンのミサを並べるのは意外と見かけない組み合わせではなかろうか。アルバムのタイトルも組み合わせて推察するに、ミサの合間にモテットを組み合わせることで、全体として「架空のミサ(messe imaginaire)」を構成している…

Obrecht: Scaramella / The Binchois Consort

フランドル楽派の作曲家ヤーコプ・オブレヒトの『ミサ・スカラメッラ』およびモテット『父の母にして娘/神の聖なる御母よ』はいずれも不完全な状態で残されていた楽曲。今回のアルバムはその二作について、ファブリス・フィッチやフィリップ・ウェラーが再…

Still und lieblich / InAlto

最近はルネサンス音楽やバロック音楽を聴くようにはなったが、ルネサンス末期と初期バロックあたりの細かい区別がどうなっているのかは未だによく分かっていない。他の時代区分にも言えることかもしれないが、二つの時代を生きた作曲家はどうやって区分され…

Nightfall / Voces8

明けない夜はない、という言葉が好きじゃない。夜という言葉に悲しみや苦しみを重ねて、朝日に希望を重ねているということは分かっている。だが、生きる苦しみのほとんどは夜ではなくむしろ太陽が昇っている間に起きるではないか。その人が生きる環境や価値…

Byrd: The Great Service & English Anthems / Alamire

アラミレはウィリアム・バード作品のリリースが続いている。昨年リリースの『Byrd 1589』に続いてリリースされた今回のアルバムのメインは、10声の大曲「The Great Service(大礼拝曲)」。HMVのページに記されている解説によれば、第一次世界大戦後の1924年…

Angele Dei / Latvian Radio Choir

ラトビア放送合唱団はラトビアをはじめとするバルト三国の合唱作品を多数録音してきたが、今回のアルバムでもラトビア出身の作曲家による作品、とりわけ最新(2023年)の作品を集めて、現在地を示すような一枚となっている。 アルバムのタイトルにもなってい…