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Bruckner: Mass in E minor & Motets & 'Bruckner's World' / バイエルン放送合唱団

2024年のブルックナー生誕200年を記念して制作されたアルバム。今回はディスク1のみを聴いたので、そちらについて。

ディスク1 はモテット5作(Ave Maria, Locus iste, Virga Jesse, Os justi, Christus factus est)、ミサ曲第2番ホ短調、エクアーレ2曲から構成。ダイクストラ指揮のバイエルン放送合唱団 & ミュンヘン放送管弦楽団による演奏。

余談だが、Apple Music Classic でブルックナーの作品が取り上げられている回数をみると、6位にLocus iste、9位にOs justi、10位にAve Mariaで、それ以外のベスト10は交響曲第3番から9番が占めている。モテットは交響曲に次いでブルックナーの顔になっていると言えよう。

アルバムはモテット Ave MariaLocus iste からはじまる。バイエルン放送合唱団の音楽はとにかく柔和で、強奏でも美しい。レガートの音楽は自然な推進力をもって進んでいく。さすがの演奏である。

続いて、ミサ曲第2番は混声合唱と管楽アンサンブルのための作品。地味に初めて聴いた。バランスの難しい編成だなと思ったが、金管パートが柔らかいオルガンサウンドを奏でており、合唱とよく調和していたのが印象的。オーボエファゴットクラリネットは全体的に「おいしい」旋律が与えられている。作品世界にどっぷりと漬かれる、隙のない演奏だった。個人的には Sanctus が好み。

後半は再び無伴奏混声合唱のモテットだが、そこにトロンボーンアンサンブルの「エクアーレ」が挿入された構成。珍しい気がするが、調べてみるとテネブレのブラームスブルックナーのモテットを集めたアルバム(Signum SIGCD430)でも、冒頭と最後にエクアーレを配置するという似たような試みがやられていた。

このトロンボーンによるエクアーレがなかなかいい味を出していた。後半に配置された3曲のエモーショナルなモテットもさすがの仕上がりで、まさしく模範的な演奏。Os justi 良かった。

なお、ディスク2 には宗教音楽作曲家としてのブルックナーの物語を朗読(ドイツ語)と音楽で楽しむ「音楽への道:ブルックナーの世界」が収録されているとのこと。勝手なことを言ってしまえば、ディスク1 のみでもブルックナーの世界の introduction としての役割は十分に果たしているとは思ったくらい。(2024/5/23)


Bruckner: Mass in E minor & Motets & 'Bruckner's World' - An introduction to the works
Bavarian Radio Chorus, Munich Radio Orchestra, Peter Dijkstra
2024 BR Klassik (900940)
Links: Presto, HMV

★★★★☆