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佼成ウインドLIVE~2024年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲~ / 東京佼成ウインドオーケストラ

吹奏楽のプレイヤーから離れてしばらく経つが課題曲だけは一応毎年聴いている。

ここ数年でプロ楽団による課題曲の早期録音やらコンサートというのが当たり前になってきた。さらに、YouTubeで調べれば、プロ演奏家によるレッスン動画なども増え、音源の選択肢もこんなにあるのかと驚かされる。

YouTubeでの課題曲公開をやり始めるのが早かったのは「WISH Wind Orchestra」のイメージがあるが1、洗足音大も課題曲クリニックや全曲コンサートを出していたり、尚美も似たようなものを出していた気はする。

音源が増えるのは良いこととも限らないとは思っていて、参考音源という「正解」にいかに近づけるか、みたいな思考での練習や演奏が増えてしまうのでは?みたいな疑念も勝手に抱いているが2、なんにせよ、無料で手に入る情報の量がかなり増えた印象は大きい。

導入を長く書いてしまったが、東京佼成ウインドオーケストラによる2024年課題曲のライブ録音を聴いた。こちらもサブスク配信されていることを考えれば、実質的にYouTubeで(無料でも)聴けるプロの演奏である。以下、各曲のざっくりとした印象を。

今年は王道のマーチが朝日賞。「勇気」がタイトルに入る作品は、1997年の「夢と勇気、憧れ、希望」と、2014年「勇気のトビラ」の二作をパッと思い浮かべる。たまたまかもしれないが、二作とも大震災とかなり近い年度に課題曲に採用されており、こういう言葉を使いたくなる「社会的背景」というのがあるんだろうなぁとは思っていたり。王道ながらも、ところどころ面白い響きが聞こえてくるなぁという印象。

旋律線と和声の美しさが光る2番(が、こういうのは人気出ないんだよなぁ)。フレーズの終わりをどう処理するかで結構色んなものがバレそうだなと。一瞬、東海大高輪台のアルバムにでも入っていたのかな?と思ってしまうタイトルでおしゃれなコンサートマーチという趣の4番。2019年の3番「春」とも近いか。意外とこういう曲は曲の推進力を保つのが難しい印象。

そして、今年の委嘱はこれまた人気が出そうな酒井格「メルヘン」。これは酒井格だなぁという一曲。文字で魅力を書くのは難しいのだが、静から動、和から洋など、目まぐるしくカラーが変わっていく楽しい一曲だった。


佼成ウインドLIVE~2024年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲~
東京佼成ウインドオーケストラ, 大井剛史
2024 / Columbia (COCQ-85623)
Tower Records

★★☆☆☆


  1. 書く上で調べたわけではないが記憶の限りでは2013年の課題曲はもうあったはず。
  2. 関連して、近年の吹奏楽コンクールの明らかなレベルアップはすごいことだが、ブレーンのダイジェストとかでチラッと聴くと「無個性化」も同時に進んでいる印象もある。過去に全国金の受賞歴がある曲を選び、そのまま「二番煎じ」に終わっているような演奏が増えた気がしてしまう。ちゃんと聴いたら違うのかもしれないし、偏見だったらごめんなさい。