イギリスの男声アンサンブルであるジェズアルド・シックスがジェズアルドの大作『聖木曜日のためのテネブレ・レスポンソリア』を取り上げた一枚。ジェズアルドの作品と並んで、ルネサンス期の名作であるタリス『エレミアの哀歌』も収録されている。さらに、ビンガム「ウォッチ・ウィズ・ミー」、ウォード「キリストは我らのために」という2曲の現代作曲家によるモテットも収められている。トラック数は58。ルネサンス縛りの第8回目。
最初のタリス『エレミアの哀歌』がいきなり洗練された仕上がりで良かった。メインのジェズアルド『聖木曜日のためのテネブレ・レスポンソリア』は初めて聴いたが、これは本当にルネサンス期の作品なのだろうかというくらいに前衛的な作品。タリスと比べても圧倒的に現代的な響きを駆使して、かなりの激しさを表現している。あまり詳しくないけれど、ジェズアルドの激動的な人生の影響なのだろうか。ジェズアルド・シックスの演奏もかなりの熱演で、大曲ながらあっという間な感じがした。
ビンガムの現代曲はウィスパーボイスのような技法も使いながら、基本的には独特のハーモニーを聴かせる作品。タリスとジェズアルドの間に置かれて、ちょうど良いスパイスになっていたと思う。一方で、1998年生まれ(!)の若手作曲家ウォードによる現代曲は、テキスト(Christus factus est など)の持っているリズムを活かして、巧みにズラしていくタイプの作品(こういうのを専門的になんと言うのか知らない…)。ラストに置かれていたのだが、ジェズアルドと並んで聴いたときにあまり浮いてないのが面白かった。
Gesualdo: Tenebrae Responsories for Maundy Thursday
The Gesualdo Six, Owain Park
2022 (Hyperion: CDA68348)
Presto, Hyperion
★★★★★(2024/6/19)