10月最後にPAS TASTAがとんでもない新譜をリリースしてくれて、ニューリリースをあれこれ聴き直したり10月リリース作を振り返る前にPAS TASTAに手が伸びるという状況が続いている。新東京やShökaのEPも素晴らしかった。11月はどんな月になるだろうか。
- 新東京『新東京 #5』
- nite pianos『nite show Vol.1』
- PAS TASTA『GRAND POP』
- She Her Her Hers『Pathway』
- Shöka『Misaligned Face』
- 家主『INTO THE DOOM (Live)』(2022)
- その他
新東京『新東京 #5』
New Dimension、This Reality、Mirrorといった既発曲に同時リリースの「n+1」を加えた4曲入りEP。新東京を知ってからまだ日が浅いので、今回のEPのコンセプトを丁寧に分析するほどの熱量も知識もないのだが、「n+1」でなんとなくピースがつながった印象はあり、この4曲を通じて世界の次元を広げていくという話をしているらしいことはわかる。「7275」では時間論を歌っていたから、そういう学術的な裏付けのある空間論を歌っているようにも見えるし、もっとシンプルに世界を拡張する=新しい世界へと飛び出して行こうよ、ということを歌っているようにも聞こえる。なんにせよ、4曲が4つの軸となって新東京らしい「時空間」を作っていることは間違いない。⑩
nite pianos『nite show Vol.1』
DE DE MOUSE × KOHEI YOSHII のユニットによる「フェアリーコアなビターチル」4曲。期待通りの上質なトラックメイク。圧巻の美しさ。秋の夜長のお供に。⑦
PAS TASTA『GRAND POP』
最強。一聴した時点で個人的には前作よりも聴きやすいなと思ったけど、PAS TASTAの側が寄ってきてくれたのか、私の好みが前よりも寄っていったのか。イントロからシームレスに接続される既発の「BULLDOSER+」はアウトロを中心に若干変わった模様。何度聴いても素晴らしいし、シングル版よりも好き。その他の既発曲もアルバムの中で聴くとだいぶ違って聞こえるような緻密な構成のプログラム。シングルで聴いたときにあまりピンと来なかった「B.B.M.」がめちゃくちゃ良く感じた。
初解禁の曲はchelmico、キタニタツヤ、清 竜人が参加。作詞にそれぞれの個性が出ているし、どれもいい曲すぎるんだよなぁ… 全曲好きだが、いまのところ「丁寧」「ISEWAN」「亜東京」の順に好き。さらに、ラストを飾るのは「THE CAR」。比較的ハイテンポで駆け抜けてきたこのアルバムが急にスピードを緩めて、これまでの道程を回想するようにじっくり歌い上げるロックバラードへ辿り着く。J-POPのきわめて「王道」を長いフェードアウトで終わってゆくのが、二作目にして早くもJ-POPのキングのような風格を感じさせる。笑っちゃうほど良いアルバム。⑩
She Her Her Hers『Pathway』
日本語を基調とするオルタナティブロックに分類されると思うが、その日本語の独特な響かせ方はなんとなく違和感を残しながらも、スッと耳に入ってくる心地良さがあった。ダウナーで浮遊感のある音づくりが印象的。なんとなくどこかで聴いたことがありそうなのに、どこで聴いたのか思い出せないんだよなぁ… 繰り返し聴いていく中でだんだん癖になっている。パッと聴いてなんとなく印象に残ったのは「Ethos」「drip」「dreamkiller」かな。⑧
Shöka『Misaligned Face』
haruyoiの菅野咲花によるソロプロジェクト。君島大空がミックスに入っているという浅い理由で聴き始めたのだが、事前の期待を遥かに上回る衝撃的な完成度。ニューエイジにエレクトロニックが混じったような独特なトラックの中で朗々と歌われる菅野咲花による歌が独自の存在感を示しており、これがまぁ、よく混じり合っているとも言い難く分離して聞こえてくるのだが、その一方で調和的な響きを生み出している。まだそんなに聞き込めていない段階ではあるが、5曲20分の音楽世界は聞き手をグッと引き込み、心を掴んで離さない。素晴らしい。⑩
家主『INTO THE DOOM (Live)』(2022)
家主で始まった10月を家主で締める。ライブアルバムは『YANUSHI EP』『生活の礎』『DOOM』を中心とした20曲(「ひとりとひとり」のみ『石のような自由』)に加えてアルバム未収録の「陽気者」を収録。恐ろしいほど名曲しかない。そんなに耳が良くないこともあってライブでのバンドアレンジの違いに気づけるほどではないけれど、それでもギターにベースにドラムに随所でいい音が鳴っていることはよくわかる。ライブ盤らしく切れ目なく楽曲が繋がっていく感じや、テンポ感の自在さも聴きどころ。個人的にはラストの「近づく」があまりにも最高だった。⑨
その他
BUMP OF CHICKEN「なないろ」
ふと見上げた空に浮かんでいた雲が少し虹色に見えて、これがいわゆる「彩雲」なのかは分かってないんだけど(調べた感じでは「幻日」かも)、『おかえりモネ』のこと、そしてこの曲のことを思い出した。もっと外に出ないとな。