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Poulenc: Figure Humaine / Accentus

プーランクの『人間の顔』を聴きたいなと思って選んだ一枚。アクサンチュス室内合唱団 × エキルベイの演奏。『7つの歌』と『雪の夕暮れ(雪の夜とも訳される)』も合わせて収録されて19トラック39分。

Poulenc: Figure Humaine

Poulenc: Figure Humaine

  • アクサンチュス室内合唱団 & ローランス・エキルベイ
  • ワールド
  • ¥1681

『7つの歌』はエリュアールおよびアポリネールの詩に1936年に作曲された一曲。プーランクの合唱作品(教会音楽を含む)の中では早い時期の作品だが、個性あふれる魅力的な7曲が並んでいる。残りの二作に比べると(難しくないとは言わないが)、かなりキャッチーさがあるし、アクサンチュスの演奏も上品な柔らかさが光っている。たとえば1曲目は「白い雪」という題の曲(アポリネール)だが、後述の『雪の夕暮れ』とはまるで異なる優雅さがある。軽快さのあるもう一つのアポリネール曲「マリー」も印象的。

『人間の顔』は改めて書くまでもなく第二次世界大戦との深い結びつきがあり、全体としては独特のおどろおどろしさがある一曲。とはいえ、軽やかさや妖艶さ、静穏さなど多様な顔を見せるため、表現が絶妙に難しい。たとえば第2曲の最後の一音をどう歌うかだけでもいくらでもこだわれる気がする。一回聴けば難しいことは分かるが、聴けば聴くほどなおさら難しい曲だなと思うようになった。

アクサンチュスは低声が厚い(濃い)ので、それがうるさいときもあるのだが、プーランクの重厚なハーモニーを表現する上でプラスに働いているように感じる。さらに、この演奏はテキストの処理(あるいはフレーズの処理)が上手くてとても好み。フランス語に精通しているわけではないので素人感覚であることは否めないが。『人間の顔』はいくつか聴いているけど、この演奏が割とトップクラスに好き。

『雪の夕暮れ』は4曲で6分強と相当な短さなのだが、たっぷりと重い。『人間の顔』作曲の翌年1944年に、同じくエリュアールの詩に作曲されたもので、戦争を直接に描いていなくても戦争が念頭に置かれているのだろう。なんなら『人間の顔』以上に戦争の重みを「匂わせている」と言えるかもしれない。『人間の顔』は最終曲で明るい希望を見せるようなフォルティッシモが(一応)あるわけだが、『雪の夕暮れ』の最終曲はほんのりとした明るさを感じさせながら始まるにもかかわらず、最終的に明るく終わらないのがミソなんだろうと思う。その結果、このアルバム自体も少しの陰を残して終わる。それがとても良い。


Poulenc: Figure Humaine
Choeur de chambre Accentus, Laurence Equilbey
2001 (Naive: V4883)
Presto, Naxos, 対訳1, 対訳2, 対訳3
★★★★★(2024/6/19)

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