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Brumel: Earthquake Mass / Graindelavoix

ビョルン・シュメルツァーが創設した古楽アンサンブルグループであるグランドラヴォアによる、ルネサンス期の作曲家アントワーヌ・ブリュメルの「見よ、大地が大きく揺れ動き(地震ミサ)」を取り上げた一枚。カップリングとして、地震ミサと交互になるようにマヌエル・モタによるインストゥルメンタル作品がミサとシームレスに繋がるように収められている。

Brumel: Missa et ecce terræ motus

Brumel: Missa et ecce terræ motus "The Earthquake Mass" (Live)

  • Björn Schmelzer & Graindelavoix
  • クラシック
  • ¥1528

ブリュメルという作曲家のことは知らなかったのだが、オケゲムやオブレヒト、ジョスカンあたりと連なるフランスの作曲家であるという。後から調べて分かったが、「地震ミサ」は他にも録音があるし、この明らかに異色なアルバムから入るのは良くなかったかもしれない。色々な意味で衝撃的な一枚で、少なくとも他人に「一枚目」としては絶対に薦めないだろう(アルバムの試みとしては面白いのだが)。

このアルバムしか知らないで感想を書くのはかなりリスキーだと思われ、一応、別のアルバムで少しだけ確認したのだが、やはり「地震ミサ」は原曲とはだいぶ別物になっている。管楽器やエレキギターの音が入っているということもそうだし、随所で細かく音程を振るわせて歌うという、ポップススタイルの歌唱法がみられることもそうだし、細かく挙げていけばもっとあるのかもしれないが、グランドラヴォア流の新解釈「地震ミサ」として聴くべきであろう。

ただ、新解釈「地震ミサ」とその付け合わせのインスト曲で構成された一枚とみれば面白いことは確か。グランドラヴォアの演奏はツボが押さえられていてルネサンス・ポリフォニーの趣はしっかりと残している。それでも、通常のルネサンス・ポリフォニーとはあまりにも味わいが異なっている。ORA Singers ならば合唱の現代曲との対比を通じて、ルネサンス・ポリフォニーの魅力を出すところだが、このグランドラヴォアのアルバムは合唱世界を飛び出して、いわばキャンバスを変えて絵を描くように、全く異なる音響世界にルネサンス・ポリフォニーを置くことによって新たな魅力を出す一枚である。

おそらく、別のアルバムでもう少し「地震ミサ」に精通してから聴いた方が良い一枚だったが、なかなか聴けないタイプの音楽で面白かった。


Antoine Brumel: Earthquake Mass
Graindelavoix, Björn Schmelzer, Manuel Mota
2024 (Glossa: GCDP32118)
Links: Presto, HMV
★★★★☆(2024/6/21)