最近新しく聴いた音楽の中から気になったものに感想を書く定期ブログ。今週は色々と新しいものも聴けたし、新譜も豊作の週だった。
- 折坂悠太『呪文』
- Cornelius『Ethereal Essence』
- 鈴木真海子『mukuge』
- サザンオールスターズ「恋のブギウギナイト」
- mei ehara「まだ早い果物」
- 与田祐希「方位自身」
- カントゥス「最上川舟唄」
折坂悠太『呪文』
折坂悠太の最新アルバム『呪文』。サクソフォーンが印象的に響くジャズテイストの曲や、ギター主体のフォークソングなどジャンル的にもバリエーション豊かで、全体を通して色々な音が聴こえてくる面白い一枚。9曲収録で40分。
真ん中に配置されたインスト曲「信濃路」が特に良い味を出している。長い間奏がある「凪」やアグレッシブなロック曲「努努」あたりが音楽としては強い印象を残していたかなと思う。個人的な好みで言えば、「スペル」のようなベーシックな趣の曲の方が好きではあった。
後半は、「正気」のラストにさりげなく歌われる「戦争しないです」、一度終わりそうになりながらもまた始まっていく「無言」の「悪い事がまた起きる時のために手紙を書いている」というリリック、「ハチス」の途中で語られる「しいて何か望むなら 全ての子どもを守ること」という部分など、聴いていて自然と聞こえてくる言葉に力がこもっている印象を受けた。
Cornelius『Ethereal Essence』
アンビエント系の作品を中心に集めたコーネリアスの最新アルバム。収録曲はコチラ。サブスクだとなぜか「告白」が抜けているが、ASA-CHANG & 巡礼『まほう』はサブスク配信されているので、そちらで曲自体は聴くことが可能。
それにしても良い音の曲が並んでいる。テキスト付きの曲も色々とあるけれど、言葉の意味を頭で考えるよりもただ目の前の音楽世界に身を委ねて、自然と聞こえてくる言葉をそのままに感じるのが良い気がする。坂本龍一のトリビュート・アルバムにも収録された同氏の「Thatness And Thereness」の Cornelius ver. の静謐な美しさに少しほろっと来た。
鈴木真海子『mukuge』
一言で言えば、清涼感のあるシティポップ系のアルバムという感じだろうか。音楽ジャンルには詳しくないけれど、分かる範囲ではジャジーな曲やボサノバ風の曲など、とにかく多様なサウンドの音楽が収められている。鈴木真海子はこのアルバムで初めて聴いた上、どんな人なのか知らずに聴いたので、後からラッパーだと知って結構驚いた(確かにラップパートがやたら上手いなとは思ったけど)。
歌っている内容はパーソナルな日常レベルのことが多く、ほとんど飾ることもなく平易な言葉で歌い上げるのが印象的。たとえば「お酒を飲んだ夜」は、あるあるとは少し違うんだけれど、妙に「分かるなぁ」と思える情景が描写されたリリックが特徴的であった。ラップで歌われるリリックも色々と書きたいものはあるが、特に「5月のうみ」の「心にたくさん貼ってある付箋 全部ぐしゃぐしゃにして捨てる」あたりのリリックが好みだった。
サザンオールスターズ「恋のブギウギナイト」
古くて新しい感じがする。サウンド的には全くサザンっぽくないのだが、ちゃんと聴いていくと随所に桑田節が感じられて、絶妙にクセになる一曲だった。「踊らにゃSong!!」
mei ehara「まだ早い果物」
とにかく良い。この良さを言語化するには私の語彙力が圧倒的に足りない。ギターもベースもあまりにも魅力的だし、小出しで歌われていくリリックも良い。ヴォーカルも良い。過去の曲も聴いていかねばという気持ちにさせられた。
与田祐希「方位自身」
映画『トラペジウム』はそのうち配信に来たときに観ようかなくらいに思っていたが、あんまり情報を得ていなかったので、西野七瀬が高山一実と並んで声優に参加していたとか、エンディング曲のデモ版を与田祐希が歌ってたとか、その辺の話はつい最近まで知らなかった。
高山一実作詞の本曲はもちろん「東西南北」をモチーフにしているのだが、意図的かは不明ながら「遠回りしたよ 坂道を」という直球の匂わせリリックなどもあり1、与田祐希が仮歌を入れたということも踏まえれば、(過剰な)読み取りをしてもしなくても、「乃木坂」が投映されたリリックとして解釈できるだろう。
与田祐希の歌は特段上手いというわけでもないが、この歌声を聴けば彼女が選ばれた理由は何となくわかる。あまり好きな言葉ではないのだが、やはり「未完成は美しい」と思ってしまう。もっと言えば、その未完成さ(より直接的に言えば「幼さ」)が、この歌のどこか「夢」っぽさ、人の夢の「儚さ」を際立たせていたように思う。
カントゥス「最上川舟唄」
ラストは合唱曲。外国の合唱団が歌う日本語の合唱曲について調べていた中で見つけた演奏。日本の男声合唱団(特に大学生)がこの手の民謡を歌うとどこかで聴いた演奏に倣って酒飲みの大声大会のようになりがちだが、カントゥスの演奏はフラットで丁寧な仕上がり。Svanholm Singers の「斎太郎節」を聴いたときも思ったが、歌う分には大声大会も楽しいけど、聴く分にはやっぱりこういう丁寧な演奏の方が好きだなぁとは思う。タダタケとか聴いてみたい。