ルネサンス・ポリフォニーを専門とする男声アンサンブルグループであるジェズアルド・シックスがウィリアム・バードを取り上げた一枚。ルネサンス縛りで聴く「ルネサンスシリーズ」の第5回目。ちょっとバードに偏り気味かも。
「5声のためのミサ」に加えて、Ave verum Corpus、Afflicti pro peccatis nostris(日々自らの罪に悩まされたるわれらは)、Tristitia et anxietas(悲しみと不安が)、Ave Maria、Circumdederunt me(死の悲しみがわれをとりまく)、Emendemus in melius(よりよき生活のうちに)、De lamentatione Jeremiae prophetae 'Lamentations'(エレミアの哀歌)を収録。Ave verum Corpus が4声、Afflicti pro peccatis nostris が6声、残りは5声の作品となっている。
なお、5声のためのミサ、Ave verum Corpus は ORA の演奏でも聴いたばかり。
定期的に書いていることだが、ミサが途中で切れる構成は個人的に苦手なところがある。知識がないので、おそらく当時からこのように演奏のされてきたのだろうということは推察できるが、なぜこのようなスタイルを取っているのかはよく分かっていない。
一つ思ったのは、何を挿入するかによって、ミサに新たな「カラーが出る」ものなのかなとは思ったり。ジェズアルド・シックスのこのアルバムでは、悲哀を感じるような静謐な作品が挿入されている印象がある。それがミサにどのような印象を与えているかと言われるとまた難しいのだが、ミサもかなり静的な仕上がりに聞こえる。女声ではなくカウンターテナーによって高音域が演奏されていることや、各声部が一人ずつのアンサンブルであることも影響しているかもしれない。男声のみのアンサンブルは女声が入るよりもむしろ温和さが増すような感じがするのは面白いところ1。ORA Singers とは全く異なる趣のミサが楽しめる。
アルバムの最後はたっぷりと「エレミアの哀歌」が歌われる。いくつかの曲は対位法的に(アルバムの中で一番くらいには)複雑な印象もあるが、良いバランスで乱れることなく自然に推進していく心地良さ。人数が少ないので当然ながらハーモニーは薄めだが、カチッとハマったハーモニーには月並みな言葉を使えば 1+1+1+1+1 を 5 以上にする充実感がある。
Byrd: Mass for five voices
The Gesualdo Six, Owain Park
2023 (Hyperion: CDA68416)
Presto, Hyperion, HMV
★★★★☆(2024/6/13)
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- これを「女性的」と言ってしまうのはステレオタイプ的が過ぎるか。↩