前記事に続いての連続プーランクである。お目当ては完全に『人間の顔』。エリック・エリクソン指揮のオランダ室内合唱団による演奏が収められた2000年リリースの一枚を選んだ。これは視聴がほぼ初。色々なアルバムに気軽に手を出せるサブスクはありがたい。
「雪の夕暮れ FP126」「人間の顔 FP120」「8つのフランスの歌 FP130」「酒飲み歌 FP31」「小さな声 FP83」「7つの歌 FP81」を収めた1時間強のアルバムで、前回聴いたアクサンチュス版よりもさらにボリュームのある内容。
最初に元も子もないことを書いておくと、このアルバムは残響があまり好きでなかった。録音が悪いと言えるかまでは分からないが、もったりとした感じがかなりマイナスに思われた。教会音楽ならこのくらいでも良いのだが。
冒頭からいきなり「雪の夕暮れ」と「人間の顔」という構成はなかなか重いなぁと思うのだが、重い演奏っぽさはあるのに強奏でなんとなく音が薄かったり(録音のせいかもしれない?)、どこか軽くも聴こえる。エリクソンの解釈が合わないとか合唱が下手だとか言うつもりはないのだが、色々と物足りなく聴こえる。「自由」のラストもあぁーそっちね、という感じ。盛り上がった最後の最後にむしろ抑制する感じが「プロっぽい」。プロの演奏がアマチュアの演奏より「つまらない」ということが時々あるけれど、個人的にはまさにそんな感じ。念のため書くと演奏が下手ということではないし、好みの問題だとは思う。端的に言えば、アクサンチュスよりも「丁寧に美しく重くあろうとしている」印象はあって、「オブラートに包む」ってこういうことなのかなみたいなことを思っている。
「8つのフランスの歌」は(初めて聴いたのは大きいかもしれないが)結構良かったなと。第7曲「ああ、私の愛しい農夫」が良かった。全体を通して乱れることなく綺麗にまとまっている印象だったが、第3曲の「麦打ち」や、男声合唱の第4曲「木靴よ、カタコト踊れ」と第6曲「美しい人がいるなら」はもっとライトな演奏でも良いんじゃないかとは思ったり(声が重い?)。男声合唱曲「酒飲みの歌」は初めて聴いたが面白い曲で、大学生のグリークラブが歌ってそうなノリの楽しい曲。これももっとライトなはっちゃけた演奏を聴きたいなと。
女声合唱曲「小さな声」がこのアルバムで一番良かった(あるいはエリクソン × オランダ室内合唱団と合っていた)かなという印象。5曲で6分というプーランクらしい短い曲であるし、声部数が少ないので平易に聴こえるが、繊細な作品なので、丁寧な演奏がとてもよく合っている。
最後は「7つの歌」。アクサンチュスとはだいぶ違う印象を受けるし、もっとライトな仕上がりの方が… と思ってしまうところはあったが、必ずしも嫌な感じではなかった。第2曲「ほとんど歪まずに」や第5曲「美とそれに似たもの」あたりのレガート調の曲はこのアルバムも悪くないなと。第1曲「白い雪」や第3曲「新しい夜のため」では良い和音がさらりと聴こえてきて、おぉ、という気持ちになったりもした。第6曲「マリー」のラストも結構好きだった。
個人的にはうーんという感じだったが、このアルバムが好きになる日も来るのかもしれない。うーんと思いながらも細かく感想を書いたのはまた聴きそうだなと何となく思ったから。
Poulenc: Secular Choral Music
Netherlands Chamber Choir, Eric Ericson
2000 (Globe: GLO5205)
Presto, Wikipedia (プーランクの楽曲一覧), 対訳4
★★☆☆☆(2024/6/19)