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Padovano: Missa A La Dolc' Ombra & Missa Domine A Lingua Dolosa / Cinquecento

ルネサンス後期に活躍したヴェネツィア楽派の作曲家アンニーバレ・パドヴァーノのミサ「甘い木陰に」と「主よ、欺きの舌と」を収めたアルバム。男声アンサンブルグループのチンクエチェントによる演奏。

Padovano: Missa A la dolc' ombra & Missa Domine a lingua dolosa

Padovano: Missa A la dolc' ombra & Missa Domine a lingua dolosa

  • チンクェチェント
  • クラシック
  • ¥1935

収録曲はパドヴァーノ作曲のミサ「甘い木陰に」と、その元になったチプリアーノ・デ・ローレのマドリガーレ「甘い木陰に」、さらに、パドヴァーノ作曲のミサ「主よ、欺きの舌と」とその元になったパドヴァーノ作曲の同名のモテットである。パドヴァーノという作曲家のことは全く知らなかったのだが、チンクエチェントの絶品のアンサンブルでかなり楽しめた。カウンターテナーはあまりにも上手いし、低声もちょうど良いくらいの厚み(厚すぎず薄すぎず)であり、上質な仕上がりである。

音楽史的にみると、ヴェネツィア楽派は、保守的なローマ楽派(パレストリーナ、ビクトリア、アレグリなど)とほぼ同時期のイタリアでローマ楽派とは別個に発展したようだが、源流をたどればどちらもフランドル楽派にたどりつくらしい。浅い知識で述べるならば、過渡期には保守的な派閥と革新的な派閥が生まれて、バランスを取りながら次の時代へと向かっていくものなのだろう。なお、ヴェネツィア楽派は最終的にモンテヴェルディ(バロック音楽)へとつながっていく。

パドヴァーノのミサは精巧なポリフォニー作品ではあるものの、和声的な美しさや華やかさをかなり重視した作品になっている印象。なんだかんだ言ってもパレストリーナやビクトリアといったローマ楽派の作風と通じているような気がしたが(プロからしたら全然違うのかもしれないが)、それがフランドル楽派の名残の部分なのかなぁみたいなことはぼんやりと思ったり。

個人的にはかなり良いなと思える一枚だった。


Padovano: Missa A La Dolc' Ombra & Missa Domine A Lingua Dolosa
Cinquecento
2024 (Hyperion: CDA68407)
Links: Presto, Hyperion, タワレコ
★★★★★(2024/6/30)