What Didn't Kill Us

娯楽を借りた生存記録

Daser: Missa Pater Noster & Other Works / Cinquecento


今回はドイツのルネサンス作曲家ルートヴィヒ・ダーザーの合唱作品集。オルランド・ディ・ラッソ(ラッスス)の影に隠れてこれまであまり注目されてこなかったダーザーだが、そんなダーザーに光を当てた作品集が2023年には2枚リリースされている。今回はチンクエチェントによるダーザーの作品集を聴いた。なお、もう一枚はウエルガス・アンサンブルのアルバムで、こちらは次回。

ルートヴィヒ・ダーザーがどんな作曲家なのかについては、Hyperion のページに掲載されたライナーノーツを読んで少しだけ理解した。生涯を通じてカトリックのミュンヘン宮廷とルター派のシュトゥットガルト宮廷という対立する二極の宮廷礼拝堂に勤めて教会音楽を勢力的に作曲しており、その作曲様式には聴いて分かるようにかなり多様性があるが、その一方で「Ubi verbum Dei, ibi adversarii eius (Where the word of God is, his adversaries can also be found)」を信念とし、時代の変化に適合するよりも自らの宗教的信念を重視して作曲を続けたらしい。

ダーザーの各曲にはしっかりと個性があり、掴みどころがないと思える部分もあるが、惹き込まれる魅力があった。個性派揃いの小品が印象に残っていて、個人的には後半の Salvum me facFracta diuturnisFratres, sobrii estote あたりが特に好みだった。チンクエチェントのこの手のポリフォニーの歌い方は絶品だなと。

中心に位置づけられたミサ『パーテル・ノステル』については、聖歌をもとにした作品。ただ感想をどう書いたものかと困惑しているところがある。楽曲解説を読んでもうまく掴めない。自分の勉強不足も語彙不足もあるのだが、これを聴いて感じたことをうまく言い表せない。書けそうなことと言えば、credo で低声のみで歌い上げる少し珍しい部分があったのは印象的だったくらいか。そういうことが書きたいんじゃないのだが。このフワッとした言語化できない感覚を言葉にするのはまだ難しそう。なんにせよ良いなと思える作品であったことは間違いない。この分からなさの感覚とはもう少し時間をかけて向き合ってみたいなと思う。


Daser: Missa Pater Noster & Other Works
Cinquecento
2023 (Hyperion: CDA68414)
Links: Presto, Hyperion, HMV
★★★★☆(2024/7/9)

Daser: Missa Pater noster & Other Works

Daser: Missa Pater noster & Other Works

  • チンクェチェント
  • クラシック
  • ¥1833