What Didn't Kill Us

娯楽を借りた生存記録

Great Music of Small Forms / Yekaterinburg Philharmonic Choir

今回はロシアのエカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団の演奏による一枚。アンドレイ・ペトレンコ指揮。19世紀から20世紀にかけてのロシアの合唱作品ないし、今回のために合唱編曲された作品のオムニバスアルバム。

以前、エカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団の別のアルバムについて書いたブログを読み返してみると、強奏のハーモニーの輪郭が曖昧であるということを書いていた。ただ、今回は正直その点はそこまで気にならなかった。この合唱団に耳が慣れたのか、あるいは今回の曲が比較的スケール感の小さめな優しい作品が並んでいるからか。ときどきビブラートかけすぎでは…?と思う部分はあった。

ヴァルラモフ「Why Must I Live and Grieve」など、細かいパッセージが重要な曲では少しクリアさに欠けるが、コルサコフ「The Tatar Captivity」やボロディン「In a Monastery」のように深く静謐な美しさを要求される作品は非常に魅力的な演奏が楽しめる。真夏に聴くには合わなかったが厳冬を感じさせるシェバリーン「The Winter Road」はこの合唱団だからこその良さを感じた。チャイコフスキー「A golden cloud slumbered」やムソルグスキー「Prayer」のように重厚な響きを要求される曲ともなれば深い低音が魅力となり、さらにどこか温かい光を感じられるような演奏だった。

独唱が入る作品もかなり多く、それぞれが魅力的な作品。中でもソプラノとアルトの2声の独唱による華やかさがあったルビンシテイン「Mountain Peaks」と、合唱の作る霧がかかったような音響世界に独唱が語るように歌うのが印象的だったアバーザ「A Foggy Morning」を推したい。

最終曲に置かれた民謡「The Little Bell」もまさにそうだが、本アルバムはおどろおどろしさのようなものはほとんどなく、素朴な響きの作品が多い。こういう作品は、少し雑味のある土臭い合唱がよく合っているように思われた。期待以上に良かった一枚。


Great Music of Small Forms
Yekaterinburg Philharmonic Choir, Andrei Petrenko
2023 (Fuga Libera: FUG800)
Links: Presto, hmv
★★★☆☆(2024/7/25)

Great Music of Small Forms

Great Music of Small Forms

  • Yekaterinburg Philharmonic Choir & Andrei Petrenko
  • クラシック
  • ¥1681