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Rachmaninoff: Liturgy of St. John Chrysostom / Estonian Philharmonic Chamber Choir

久しぶりのラフマニノフ。エストニア・フィルハーモニー室内合唱団(カスパルス・プトニンシュ指揮)の演奏で、『聖ヨハネス・クリソストムスの典礼』を聴いた。抜粋での録音(第15曲が抜けている & おそらく各曲もカットあり)。通しでしっかり聴いたことはないかもしれない。

定期的に書いていることだが、ロシア系の合唱音楽の演奏はロシアらしい泥臭さのある深い合唱かそのような泥臭さを排した清涼な合唱かで分かれる。必ずしもどちらが優れているという話ではないが、同じ楽曲でもかなり異なる味わいになる。今回はロシアに隣接する旧ソ連エストニアの合唱団(エストニア・フィルハーモニー室内合唱団)の演奏だが、明らかに後者のサウンドで、清涼で上品なラフマニノフ。同じバルト三国のラトビア放送合唱団の録音(Ondine: ODE1151-5)と近い。低音域は少し薄いくらいだが、それがちょうど良いと思わせる心地良さがある。

ラフマニノフの『聖ヨハネス・クリソストムスの典礼』の中では、12曲目「We Hymn Thee」が圧倒的に好き。このアルバムでの演奏はとにかく静謐な演奏。単曲での収録だとドラマチックに展開させていく場合もあるが、やはりこの演奏のように抑制的に祈るように静かに歌われる中でソプラノの独唱が天から降り注ぐように静かに聞こえてくるのが良い。音楽的な盛り上がりは直後の13曲目「Hymn to the Mother of God」が担ってくれている。

『徹夜祷』と比べると影が薄い感じがしてしまうし、個人的にも『徹夜祷』の方が好きなのだが、しっかりと聴いてみると音楽的な美しさという点ではこちらに軍配が上がるのではと思うくらい、全体を通して「美しさ」が支配的だった。裏を返すと音楽的なメリハリに欠けるところがあり、抜粋でも長いかなと思ってしまったところはある。最終トラック(19曲目・20曲目)はもっと強奏で華やかに歌われても良さそうだが、美しさを保っているあまり、小さくまとまってしまった印象は否めない。演奏の問題か作曲の問題か。なんにせよ名曲ながらパンチ力はあまり強くないなというのが率直なところ。


Rachmaninoff: Liturgy of St. John Chrysostom, Op. 31
Estonian Philharmonic Chamber Choir, Kaspars Putniņš, Raul Mikson (tenor), Olari Viikholm (bass), Maria Valdmaa (soprano)
2022 (BIS: BIS2571)
Links: Presto, hmv
★★★☆☆(2024/7/29)

Rachmaninoff: Liturgy of St. John Chrysostom, Op. 31 (Excerpts)

Rachmaninoff: Liturgy of St. John Chrysostom, Op. 31 (Excerpts)

  • エストニア・フィルハーモニー室内合唱団 & カスパルス・プトニンシュ
  • クラシック
  • ¥1833